華原朋美は本当に依存体質か? 半生に見る「自己責任」の呪縛と苦悩

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ロスジェネを縛る自己責任の呪縛 「依存体質」朋ちゃんが陥るポジティブ信仰

 ありのままの自分を見せれば、周りも楽しく受け入れてくれるに違いない。それは理想論であり、時と場合によることは、大人になれば嫌でも気がつくものだ。でもYouTubeを見る限り、朋ちゃんはまだ気がついていなかったようである。きっとなんでも自分の中で完結させてしまうのだろう。だから受け取り手の気持ちなど考える余地さえなく、アンバランスなコミュニケーションになる。

 貯金が減っていくと嘆いた彼女に対し、周囲を頼ってみてはとファンがコメントするも、即座に却下。父親からも心配して連絡が来たようだが、大丈夫とつっぱねていた。親兄弟には今まで迷惑をかけてきたから、という負い目もあるという。子どももいるし、自分には歌しかないが、それでも仕事がないならUberEatsやレジ打ちでもなんでもやる、と語っていた。人に迷惑をかけないよう、人の言うことに踊らされないよう、自分のことは自分でやる。そんな生真面目さというか、強情さが随所に感じられた。

 彼女はちょうど、ロスジェネ世代である。不景気の影響や上の世代との格差が厳然とありつつも、生きづらいのは「自己責任」と言われがちな世代だ。今の生活に不満があるのは努力が足りないから、成功した人はおしなべて努力しているのだから、と。

 朋ちゃんはかつて芸能人として大成功を収めたものの、やはりその自己責任という呪縛にとらわれ続けたように見える。朋ちゃんという呼び名はTKを思い出させるから、苗字で呼んで欲しいと和田アキ子に言ったという。そして一人で大丈夫と証明するために、表舞台に無理して出続けてきた。TKとの交際時のべったりぶりや薬物依存を見て、依存体質なのだろうと同情されていたことも、呪縛に拍車をかけたことだろう。人に頼ることも、薬に頼ることももうできない。したくない。依存という言葉をはねのけたい。そんなかたくなさが、ずっと彼女の人生を縛っているように思えるのだ。

 ただ現在のYouTubeでも、悪いクセが出ているといえば出ている。ポジティブシンキングへの依存である。お金が減って不安だけど、これは前向きになるための出費、などとうつろな目で語られると薄ら寒い。阿佐ヶ谷姉妹のモノマネ「玄関開けたらいる人」で、「いま、幸せですか?」と微笑みを浮かべて新興宗教に勧誘するおばさんを思い出した。今の私は幸せ、子どももいて幸せ、今は苦しくても前向きに歩んでいるだけ。だって私は愚痴も言わず誰にも依存せず自立できているんだから。そう自分に言い聞かせているような朋ちゃん。

 依存することと頼ることは違う。頼れる先、弱音を吐ける先を複数作ることが本当の自立につながるという。つゆだくの牛丼でも食べながら、弱音を弱音のまま、すんなり言える朋ちゃんをいつか見てみたい。その時彼女の「I’m proud」は、実感を持ってまた響いてくることだろう。

冨士海ネコ

2020年9月25日掲載

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