菅総理が直面する「安倍政権」負の遺産 河井夫妻問題、警察の暴走をどうするか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

河井夫妻に目をかけていた

 コロナ禍での船出となった菅義偉(よしひで)(71)政権。まずはこの難局を上手く乗り切ってほしいところだが、コロナ以外にも2つの大きな問題を前政権から引き継いでいるのだ。さらに、その2つの難題両方に菅総理が深く関与していて――。

 ***

 まずは「河井夫妻問題」。目下、ともに公選法違反(買収)の罪に問われ公判中の身である河井克行代議士と妻の案里参院議員は、

「カルロス・ゴーン事件で『人質司法』との批判が起きたため、保釈が認められるのではないかとも見られていました。しかし東京拘置所に勾留され続けた。有罪は必至です」(司法記者)

 そんな河井夫妻の買収の「原資」は、昨夏、案里氏が広島選挙区から参院選に初出馬した際、自民党本部から案里氏サイドに振り込まれた大金だったのではないかと囁かれている。その額、実に1億5千万円。そして、

「河井夫妻に目をかけていたのは、他ならぬ菅さんです。案里さんの出馬によって、広島では自民党候補の共倒れも懸念されていました。しかし菅さんは、『案里さんはとにかくいいタマ』と公言し、彼女を全面バックアップしたんです。付言すれば、案里さんは今や絶大な権力者である二階(俊博)幹事長の派閥です。1億5千万円という大金の支出が、誰と誰の意向で行われたかは言わずもがなでしょう」(同)

 つまり、河井夫妻問題は「菅総理問題」と言い換えることも可能なのである。

「安倍総理ベッタリ記者」の逮捕を阻止

 次に菅政権下で懸念されるのは「警察の暴走」だ。

 3年前、本誌(「週刊新潮」)報道によって「安倍総理ベッタリ記者」ことジャーナリストの山口敬之氏に対する「準強姦逮捕状」が握り潰されていたことが明るみに出た。そして、準強姦事件当時に警視庁の刑事部長を務めていた中村格(いたる)氏(現在は警察庁次長)は本誌の取材に対して、

「(逮捕は必要ないと)私が決裁した。(捜査の中止については)指揮として当然だと思います。自分として判断した覚えがあります」

 と、認めたのだった。つまり、菅官房長官の秘書官を務めた経験もある中村氏は被害女性である伊藤詩織さんの人権よりも、時の総理の覚えめでたい記者を守る判断を下したわけだ。

些細なケンカで「強権逮捕」

 さらに、「些細」なゲームセンターでの喧嘩を巡ってはこんなこともあった。被害者が安倍総理の元秘書の子息であったせいなのだろう。「たかがケンカ」にも拘(かかわ)らず、その捜査には精鋭部隊である警視庁本庁の捜査1課が投入され、今度は逆に“加害者”が逮捕されたのだ。巷(ちまた)に溢れた「小競り合い」で異例の強権逮捕――。これを「指示」したのも中村氏である疑惑を本誌は昨年報じている。

 徹頭徹尾、時の権力者に寄り添い捜査の指揮棒を振る中村氏、人呼んで「政府の番犬」。そんな中村氏は、前記の通り菅官房長官の秘書官も務め、

「ふたりは“切っても切れない”関係を築いていきました。菅さんは中村さんを、『将来、間違いなく警察庁長官になる人物。紹介しましょうか?』と、さまざまな場面で売り込んでいました」(菅氏を知るマスコミ関係者)

 そして実際に、

「来年、菅さんの威を借る中村さんが警察庁長官になるのは確実です」(警察庁担当記者)

 こうして振り返ると、河井夫妻といい中村氏といい、菅総理の「人を見る目」が気になるところだが、

「自分自身でカリスマ型ではないと思っている菅さんは、できるだけ波風を立てずにソロリと船出するのではないでしょうか」(大手メディアの官邸担当者)

週刊新潮 2020年9月24日号掲載

特集「『菅総理』の裏街道」より

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。