86歳「キレる老人」が孫娘を惨殺した理由 認知症と泥酔が原因か

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 86歳の老人が16歳の孫娘を刺し殺した――。長閑な農村を一夜にして恐怖に陥れ、世間を震撼させている凄惨な事件には、報じられていない事情がある。

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 福井県福井市の市街地から北西におよそ10キロ。田園地帯が広がる黒丸城町は、日が落ちると漆黒の闇に包まれる。集落の道を照らすのは、点在する家屋の灯りと月明りのみ――。

 今月9日の夜、日付が10日に変わったころ。そんな地域が赤く染まった。パトカーや救急車など、緊急車両の赤色灯である。

「無職の冨澤進容疑者が、自宅で同居する高校2年の孫、友美さんを殺害。殺人容疑で逮捕されました」

 と、県警担当記者。

「進容疑者は自宅1階にある友美さんの寝室で、彼女の上半身を複数回刺しました。友美さんには防御創がなく、服装の乱れや争った跡もない。寝室や台所など複数箇所に血痕が残されていて、台所の血痕がもっとも多かった。警察は、彼女が寝ているときに突然襲われ、最後は台所で倒れた可能性があるとみています」

 死因は、大量に血が流れたことによる失血死。

「進容疑者は10日の0時過ぎ、息子である友美さんの父親に電話。“喧嘩していたら動かなくなった”と伝えています。犯行は30分ほど前で、駆けつけた息子が1階で倒れている友美さんを見つけて110番通報。一帯は騒然となりました」

紙パックの日本酒

 現場の進容疑者宅では、2カ月ほど前の7月ごろから、祖父と孫の2人暮らしがはじまっていた。近隣に住む女性によると、

「進さんのところは長いこと米農家をやっていました。畑もちょっとやっていたかな。奥さんと2人で住んでいたけれど、数年前に奥さんが病気で入院されて、進さんは独り暮らしでした。庭でちょっと野菜を作ったりはしていたけど、ここは近くに料理屋もスーパーもないから、息子さん夫婦が週1回か2回来て、食べ物をすぐ食べられるようにして置いていたんだって」

 この息子夫婦、すなわち友美さんの両親は、

「福井市内のマンションに友美さんと妹の4人で住んでいたんです。でも7月ころ、友美さんだけが親元を離れてこっちに移り住みました。なんでも、両親の仲が悪いことが不満で“一緒に住みたくない”と言っていたとか。友美さんはここから自転車で学校に通っていたようですよ」

 そんな友美さんは教員を目指しており、2年時は無遅刻無欠席。コロナ禍のなか、バイトもしていたという。捜査関係者によると、

「なぜ孫娘を刺したのかがはっきりしないんです。容疑者は“孫にキツく当たられて腹が立った”と話してはいますが、それだけで老人がキレて、あれほど惨(むご)い殺し方をするのかという疑問が解消できない」

 要は、供述が曖昧なのだ。

「というのも、断定はできませんが、認知症の疑いがあり、呂律が回らないことがある。そして実は、犯行現場に紙パックの日本酒が残されていました。警官が駆けつけたとき容疑者は酔っていて、ひょっとしたら事件の詳細を憶えていないのでは。あるいは認知症が“まだら状態”で、犯行時の意識がなかったのではないかと危惧しています」

 先の女性とは別の近隣住人が目を潤ませて話す。

「トラブルがあったなんて信じられません。2人で暮らすようになって、一緒に買い物にも出かけていたし、進さんは、お小遣いもあげていたんですから」

 その暮らしを引き裂いたのが病と酒ならば、動機の解明など真相は漆黒の闇へと消え去ることになるのか。

週刊新潮 2020年9月24日号掲載

ワイド特集「密室の出来事」より

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