「V6」勤続25年…結婚率の高さ、個人活動、アイドルの領域を広げてきた軌跡

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6人中4人が結婚し、父になっているという現役のアイドルグループも珍しい

 また、V6が語られるときには、その結婚率の高さと相手の豪華さもよく話題になるところである。2007年に先陣を切った井ノ原快彦は、ジャニーズとしては珍しく結婚相手である瀬戸朝香と並んで記者会見をした。

 この時点で、SMAPは木村拓哉が結婚しているのみ、TOKIOに妻帯者はゼロだった。その後、16年に長野博と白石美帆、17年に岡田准一と宮崎あおい、18年に森田剛と宮沢りえと続いた。現在、4人は父となっている。

 6人中4人が結婚し、父になっているという現役のアイドルグループも珍しい。だがよくよく考えれば、10代半ばから20代前半の6人で結成されたV6も、最年少の岡田准一が今年40代に、最年長の坂本昌行は来年50代に突入する。

 25周年記念の最新シングルのキャッチコピーは『勤続25年の男たち』と、“勤続”という普通の働く男性に見立てられた言葉が使われている。

 この“勤続”という言葉は、アイドルとは遠い場所にあるイメージだが、V6にはしっくりくる。

 当然、25年も経てば働き方も人生のステージも変わっていく。これまで、アイドルには当てはめられていなかった常識が、V6には自然と適用されている証拠の表現なのではないだろうか。

 無理をしすぎると25年も勤続はできない。もちろん色々な努力はしてきているはずだが、“何かを代償にしてアイドルをし続けている”というイメージがV6には薄いのだ。

 光あたるところには影ができるが、その影がV6には見えづらい。

「アイドルグループはグループとして常に精力的に活動し続けねばならない」とか「アイドルは結婚してはいけない」という、誰が決めたわけでもない世間の空気を、V6は結果的に打ち破ったことになる。

 最近になって多様性という言葉が多く発される現代だが、V6は、アイドルとしての多様性について25年をかけて体現してきたグループなのである。

「続けるための策を練ったりしたことなんて、ありません」

 それはもちろん「新しいアイドルの形を作ろう」といった気張ったタイプの意志に基づいたものではないはずだ。

 V6が長く続いた理由を三宅健は「偶然の産物」として「続けるための策を練ったりしたことなんて、ありません」と語っているし、井ノ原も「誰にもやめる理由がなかったし、みんながそうしたいと思ってきたから」としている。(*3)

 さらに「途中でやめようと思ったら、たぶんやめられたんじゃないのかな。“仲間”とか“絆”とかいちいち確認し合ってるわけではなく、あくまでマイペース」(*3)と語るのも、絆がことさら強調される現代において、気負わすぎず、爽やかで心地いい。

 岡田准一もV6を「バラバラの職人気質を持ったメンバーが集ってて、気楽にやってるのが僕たちのよさ」(*2)と語り、リーダーの坂本昌行は「V6は目標を決めず、常に目の前にあることに対して一生懸命やってきたグループ。それが結果として今につながっている」(*3)と分析している。

「気楽に」「目標を決めず」と聞くと緩く感じてしまうかもしれないが、目の前のことには一生懸命。それが積み上がった結果が今のV6なのだ。

 CDの売上枚数だけで測れば、デビュー初期の方が数字としての勢いはあったことは確かだが、それはV6というグループが一過性のブームに終わらず、文化になっていった証拠なのではないだろうか。

 長野博は、1995年9月、V6結成時の記者会見でこう宣言していた。

「光GENJIのように一世を風靡し新しい時代を作っていきたい」

 たしかに一世を風靡したあとに、彼らはそれで終わらずに、ゆっくりと新しい時代を作っていったのである。

(*1)テレビ朝日「10万円でできるかな」2020年7月27日放送
(*2)別冊カドカワ2015年7月29日号
(*3)週刊朝日2019年1月4日‐11日合併号

霜田明寛(しもだ・あきひろ)
1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。就活・キャリア関連の著書を執筆後、4作目の著書となった『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は3刷を突破。 また『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』の編集長として、映画監督・俳優などにインタビューを行い、エンターテインメントを紹介。SBSラジオ『IPPO』凖レギュラー。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月22日掲載

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