「Eテレ」でお笑い芸人が重宝される2つの理由 専門家は「カンニング竹山」を高評価

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計算され尽くした話術

 お笑い芸人はトーク力を武器に、番組と視聴者を結ぶ“インターフェイス”として活躍しているというわけだ。

「インターフェイスには2つの意味を持たせました。1つは番組制作側が想定する視聴者ではない人たちも“つないで”、興味を持たせる力です。代表例は、子供向け番組に出ているお笑い芸人を見て、親も番組のファンになるというケースでしょう。2つ目は番組想定の視聴者を、しっかりと“つなぐ”場合です。子供たちにとっては難しい算数の番組でも、お笑い芸人が出演することで興味を持つわけです」(碓井氏)

 碓井氏が高く評価するお笑い芸人の1人が、「ドスルコスル」(木・9:45)に出演しているカンニング竹山(49)だ。

「教科で言えば『総合的な学習の時間』を想定した番組で、高齢化社会の弊害や、外国人との共生、環境破壊といった大人でも難しい社会問題を取り上げます。『カンニング竹山さんは、ワイドショーのコメンテーターも務めているから適任だ』と思う方もいるでしょう。ところが竹山さんは、大人向けの情報番組に出演している時とは話術を変え、あくまでも番組想定の視聴者である小学生に合わせて自説を語るのです。本当にお見事で、これなら小学生は『ドスルコスル』を好きになるだろうな、と思います」(碓井氏)

民放キー局も同じ

 大人向けの番組でも,お笑い芸人がキャスティングされるのは同じ理由だ。特にEテレの番組は教育を前提としているものが多く、民放キー局のようにセットに凝ったりするわけにはいかない。

 スタジオでのシンプルなトークとなれば、舞台で鍛えられているお笑い芸人が得意とするのは言うまでもない。

「実は民放キー局のバラエティ番組も、同じ道筋を辿りました。テレビの黎明期にはNHKのアナウンサーや俳優といった人々の中から、“名司会者”と呼ばれる人々が生まれました。ところが次第に番組のMCは、お笑い芸人が担当するようになります。芸人の皆さんは明るいですし、見ているだけで楽しい。加えて、絶対に『上から目線』になりません。昨今の視聴者は芸能人に親しみやすさを求めますから、お笑い芸人が適任なのです。こうしたテレビ界全体の流れが、Eテレにも及んだということなのでしょう」(碓井氏)

 Eテレの場合、語学番組を筆頭に「博学な講師が無知な視聴者に教える」という構図が避けられないものが多い。

 大学教授が出演することも珍しくなく、彼らの立ち位置が「上から目線」と視聴者に批判される潜在的なリスクは意外に高い。

お笑い芸人が“苦手”な分野

 しかしながら、講師の脇に立つお笑い芸人が1回でもボケてくれれば、リスクの軽減が期待できる。

「もちろんお笑い芸人の皆さんにとっても、Eテレの出演は大歓迎でしょう。政治の世界で言えば、“身体検査”が済んだようなものです。クリーンなイメージが付加されます。官公庁のPRといった仕事も期待できるかもしれません。実際、Eテレのキャスティングを見ると、下品な芸の方々は綺麗に排除されていることが分かります。制作陣も、その辺はしっかりと計算しているわけです」(碓井氏)

 お笑い芸人がテレビ界で圧倒的な力を発揮している理由が明らかになったわけだが、そんな彼らでもEテレが起用していないジャンルがある。

「旅するイタリア語」(火・0:00)は俳優の小関裕太(25)、「旅するスペイン語」(水・0:00)は歌手・女優・モデルなどの肩書を持つシシド・カフカ(35)、そして「旅するフランス語」(木・23:30)はバレエダンサーの柄本弾(30)、と見事なまで美男美女で固められている。

 どうやら英語のような実用性が求められず、習得が憧れの対象となるような外国語の番組に、親しみやすいお笑い芸人は必要ないようだ。

 それこそスターという天空=上からのポジションから視聴者を虜にする、俳優や歌手が適任なのだろう。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月19日掲載

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