宝塚が「スパルタ不文律」を廃止 朝日新聞の仰天報道に困惑する音楽学校の言い分

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朝日が1面にしたから

 目覚まし時計の音を鳴らさずにどうやって起きるのだろう、といった疑問も浮かぶ。改めて、宝塚音楽学校に聞いてみた。

「宝塚音楽学校というのは、確かに厳しいところはあります。1学年わずか40名の2年制で、全校で80名しか生徒はおりません。しかも、同じ1年生(予科生)に、中学を出たばかりの15歳の子もいれば、高校を出た18歳の子もいるので、年下の上級生もいれば、年上の下級生もいる。その中で、宝塚の舞台に上がるために一緒に学ぶわけです。華やかな舞台ですが、セリ(昇降装置)など危険も伴いますから厳しく教えることも必要です。上級生から下級生への指導も、一般の学校とは異なるところがあるのです」

 確かにそういった一面はあるだろう。それにしても、先輩が乗る電車に一礼するのは時代後れという気もするが……。

「かなり以前から、電車に向かって一礼など止めるよう言っているんです。確かに以前にはそうしたこともあったので、地元ではよく知られています。嘘か誠か、『挨拶しとらんやないか!』と注意されて、仕方なく礼をしたなんて笑い話も……」

 都市伝説みたいなものか? では、朝日新聞をはじめとする報道は何だったのか。

「朝日新聞には英断のように取り上げていただきましたが、今回、初めて改めたという話でもないんですよ。長い歴史の中で、その都度変えてきているものです。生徒たちが、これはやり過ぎと自発的に止めることもあるんです」

 なんだか、話が違うようだ。

「実は、朝日新聞から取材を受けたのは新型コロナよりも以前のことです。どういうきっかけで取材に来られたのかは分かりません。その後、コロナ禍もあり、安倍首相の辞任などもあり、記事はいつ掲載できるかわからないとのことでした。夕刊に掲載されるのかなと思っていましたが、朝刊1面に掲載されていたので驚きました。最初はデジタル版で11日夜に配信されました。12日には新聞1面と社会面に掲載されました。すると今度は、共同通信がうちにも取材させてくれと来たんです。それで、今回と同じように、一斉に止めた訳ではなく、少しずつ変えてきたことだと説明もしたんですが……」

 結局、宝塚音楽学校は今回初めて改革に乗り出した、といった記事になったわけだ。まあ、そのほうが面白い記事にはなるだろうが……。

OGの昔話が今も

「様々な地方紙にも掲載されたようで、SNSには『伝統的作法がなくなって残念』との声もあるようですし、生徒の親御さんからそんなに厳しいところだったのかと心配されてもいるようです。とはいえ、在校生たちがもっとも面食らっているんです。そんなこと、やっていないのにと……」

 改めて、朝日の報道とネット上の書き込みを確認させてもらった。

 先輩の前での決まった表情。いわゆる“予科顔”というもので、朝日によると“上級生の前ではみけんにしわを寄せて口角を下げる”表情だそうで、今回廃止されたとある。一体、どんな表情なのかよく分からないが……。

「“予科顔”はともかく、先輩からの忠告は真剣に承るという意味の作法としては、今も残っています」

 上級生が下級生に科しているという過度な提出物は、どうなっているのだろうか。

「ノートの提出ですね。今はしていません」

 遠くの先輩に大声で挨拶はどうか。

「昔はOGに会ったら大きな声で挨拶していました。かつては、ただの派手目な人にも挨拶をした生徒もいたようですけど……。これも数年前になくなりました」

 先輩への返事は「はい」か「いいえ」に限定されているのか。

「そうしたこともあったと思います。しかし、それではコミュニケーションが取れませんからね。今は普通に会話しています」

 廊下の角は壁に沿って直角に曲がるのか。

「旧校舎の頃の話だと思います。もちろん一列に歩き、私語禁止であることは変わっていませんが、時と場合に応じて。必ず、というものではありません」

 自衛隊を招いた訓練があり、一糸乱れぬ行進ができるまでしごかれるのか。

「しごきではありません。現在は自衛隊の方を招くのではなく、生徒が自衛隊へ行っています」

 寮では、様々な細かい“掟”があるようだが。

「全寮制ではありませんので、自宅から通う生徒もおります。そして寮もずいぶん前に鉄筋コンクリートの新しい建物に変わりました。寮内でのことは学校から話すべきではないと思いますが、おそらく、古い寮を出たOGがバラエティ番組などで話したことが、今でも語り継がれているのだと思います。そして、ファンの中にも、そうした厳しい予科を過ごして大成したスターに憧れる人もいますからね。私どももそうした夢を壊してはならいとも思うんです」

週刊新潮WEB取材班

2020年9月19日掲載

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