韓国で「親日派の墓暴き」が法制化へ 国会議員の多数が賛意という恐ろしさ

国際 韓国・北朝鮮

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「いくら文在寅政権が反日とはいえ、今回の動きにはびっくりしました」

 こう驚きを超えて呆れるのは、韓国出身の評論家で拓殖大学教授の呉善花氏だ。

 呉氏は韓国の現政権の「偏向姿勢」に警鐘を鳴らし続けていることで知られるが、そんな彼女でもこの度の同国発のニュースは想像の域を超えていたようである。

「これは、慰安婦問題などに加わる新しい強烈な反日カードになるかもしれません。それほど過激で野蛮な反日行為です」

 呉氏をしてこう言わしめる韓国の所業とは果たして何なのか、「怖いもの見たさ」ながら興味をそそられるところである。では早速、そのおどろおどろしい「恐怖の韓国」を覗いてみることにしよう。

 毎年、韓国が日本叩きで燃え上がる「反日月間」の8月がようやく終わった。しかし「反日有理」の同国では、いつ如何なる時も「日本狩り」の火が消えることはない。

 9月1日、100日間におよぶ韓国の通常国会が開会した。そしてこの秋の国会で、極めて「物騒」な法律の成立が危惧されているのだ。

 顕忠院親日派破墓法、略称、「破墓法」。

 同国の国立墓地(顕忠院)に埋葬されている歴代大統領ら功労者の墓を掘り返し、別の墓地に移し替えようというのである。なぜなら彼らは「親日派」だから……。

 墓を破る。そんな前近代的で野蛮な行為を現代の現実世界に甦らせようというのだから、冒頭に紹介したように呉氏が吃驚するのも当然だ。

 常に反日の火種が燻(くすぶ)っている韓国にあって、時代錯誤も甚しい破墓法に薪がくべられたのは8月15日のことだった。

「顕忠院には親日軍人をはじめ反民族の人々69人が埋葬されている」

「(春の総選挙での)当選議員の3分の2が破墓法に賛成している」

 朝鮮独立運動家の子孫らの団体である「光復会」の会長が、こう声を上げたのだ。さらには、

「李承晩(イスンマン)も親日派と結託した」

 と、韓国の初代大統領までが破墓法の対象であると訴えて物議を醸したのである。なお韓国で火葬文化が広まるのは1990年代以降で、李元大統領らの時代は土葬文化だったそうだが、

「文政権与党である『共に民主党』の議員たちが光復会会長と『共謀』して、今国会中にも破墓法の成立をと息巻いています」

 こう解説するのは、ある韓国ウォッチャーだ。

「彼ら曰く、戦前に『親日的』だった人物が国立墓地に眠ったままでは、『親日残滓の清算』が終わったことにはならないし、他の霊も安らかに眠れないという理屈なのですが……」

 埋葬されている人物が親日だったか否かに拘(かか)わらず、如何なる人物の墓であろうとも掘り起こすことなど許されてはなるまい。少なくともそれが日本の、否、世界の常識である。「墓破り」、それが死者に鞭打ち、その御霊をいたぶる行為以外の何物でもないことは言うまでもなかろう。

李朝時代に先祖返り

「韓国においても、いくら親日派の墓だからといってそれを掘り起こすなんてやり過ぎだ、というのが大方の人の考え方だと思います。しかし、常識ではあり得ないことが罷(まか)り通ってしまうのが文政権なんです」

 として、龍谷大学の李相哲教授が憤慨しながら説明する。

「韓国では、日本以上にお墓が大事にされます。先祖のお墓の向きや場所が、今を生きている子孫たちに大きな影響を及ぼすと考えられているのです。そのため、例えば事業が上手くいかない時に、風水に基づいてお墓の向きを変えたりすれば状況が改善するのではないかと考える。お墓の場所や向きが誤っていれば、そのせいで一族が没落する可能性があると考える人さえいます。それほど、韓国の人にとってお墓は重要なのです。当然、破墓法に反対の声もありますが、例によって文政権はこうした反日政策を支持率浮揚に利用しようとしているのです」

 先の呉教授も、文政権は「確信犯」だと見る。

「光復会会長の発言内容を、青瓦台(大統領府)が事前に確認していたのは間違いない。つまり文政権はこれを黙認し、破墓法で話題を集めたいと考えているのだと思います」

 もはや正気の沙汰とは思えないが、そもそも墓を掘り起こそうなどという突拍子もない発想は、一体どこからやってくるのだろうか。

「かつての李氏朝鮮時代に、『剖棺斬屍(ぼうかんざんし)』という刑罰がありました」

 こう謎解きをしてくれるのは、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏だ。

「政敵の墓を暴き、棺を引きずり出し改めて遺体を斬刑に処し、その上で政敵の一族郎党を奴隷として売り飛ばす極めて野蛮な刑罰です。今回の破墓法は現代に甦った剖棺斬屍と言えるでしょう。春の総選挙で圧勝した文大統領ら『進歩派』が、親日残滓の清算という名のもとで『保守派』の墓を暴き、大いに辱(はずかし)めようとしているのです。文政権は、表面上は進歩的でリベラルを装っていますが、その実は、李朝時代のような専制君主制に先祖返りした政権と言えると思います」

 先の李教授も、前川氏と同様に破墓法の狙いをこう読み解く。

「『共に民主党』の議員たちが破墓法の対象にしようとしている親日派は、今の野党、すなわち保守派の先祖に当たるケースもあります。つまり文政権は、親日派の墓を掘り起こすことで、今を生きる野党政治家を傷つけようとしているのです」

 墓破りという行為自体が野蛮極まりないが、それを現代の政争に利用しようというのだから、何とも下品で浅ましい。

 いくらなんでも、破墓法が成立することはないと信じたいところだが、すでにその「下地」は作られているという。

「7月10日に白善ヨプ(ペクソンヨプ)将軍が亡くなったのですが……」

 と、前川氏が続ける。

「彼は朝鮮戦争における数々の激闘で功績をあげた救国の英雄でした。北朝鮮の侵略を食い止め、今の韓国を形作った大功労者です。しかし左派は、白将軍が日本統治時代に満州国軍の『間島特設隊』に所属していたとして、その内実を見ずに彼に“親日派”のレッテルを貼りました。そのため、白将軍は本来であればふたつある国立墓地のうち、格上のソウルに埋葬されるべきなのに、格下の大田(テジョン)の国立墓地に葬られたのです。しかも埋葬後、白将軍は国立墓地のホームページ上で『親日反民族行為者』と名指しされてしまいました」

 李教授が後を受ける。

「光復会は、白将軍はたとえ大田であったとしても国立墓地に埋葬されるべきではないと主張し、霊柩車が墓地に入る時に妨害行為を行いました」

 破墓法へと繋がる「親日死者攻撃」は、着々と進められているのである。付言しておくと、

「現職大統領は必ず国立墓地を参拝するのですが、文大統領は親日派とされる人のお墓を避けて参るという露骨な行動を取っています」(同)

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