巨人、名将「原辰徳」の采配は「川上」「王」とどこが違うか【柴田勲のセブンアイズ】

スポーツ 野球 2020年9月15日掲載

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 巨人が今季最長タイの7連勝をマークして、9月1日からの13連戦を10勝1分け1敗で見事に乗り切った。2位・阪神に9・5ゲーム差をつけて貯金は「23」となった。(14日現在)。

 15日、自力Vの残る阪神との直接対決(東京ドーム)で勝てば優勝マジックが点灯する。

 もう巨人の優勝で決まりだろう。残り試合は50を切った。巨人はあと勝率5割でいけばいいが、他球団を見て8、9割で追いかけるチームがあるとは思えない。

 しかもここにきて、巨人が投打ともに充実の一途だ。11日からのヤクルト3連戦、初戦は坂本勇人が勝ち越し弾を放った。打撃不振に陥っていたものの、すっかり復調してきた。12日は岡本和真が勝ち越しの一発、13日は丸佳浩が逆転弾を決めた。

 今コラムで8月中旬すぎに、「これほど打てなくて首位にいるのは初めて見た」と記した。この3人は打撃30傑の中位から下位にいたが、それでも首位だったのはこの3人以外の選手たちがよくやっていたからだ。

 この3人以外での得点は余禄みたいなもので打つべき人が打つ必要があった。いまでは3人とも打率をジリジリと上げてきた。巨人の本来の姿に戻ってきた。しかも脇役陣も自分の持ち味を発揮している。

 投手陣ではエース・菅野智之の存在が大きい。13連戦中も2度先発して安定した投球を見せた。後に続く他の先発陣にもいい影響を与える。リリーフ陣も大竹寛、鍵谷陽平、高梨雄平、大江竜聖、中川皓太、そしてルビー・デラロサらが控える。13連戦中はどの投手に対しても大きな負担にならないように工夫をしている。高梨が2セーブを挙げたがデラロサに配慮してで、中継ぎ陣にもローテを組んでいる。

 いまここで一番怖いのはケガだ。例えば菅野が肩を痛める、坂本が負傷するなどだが、原辰徳監督は主力から脇役陣にまで気を配り決して無理をさせない。今季は連戦、連戦の特殊なシーズンだ。まあ多少ケガ人が出ても今後は5割でいけばいい。大崩れはない。

 いま振り返ると、5日の阪神戦(甲子園)で藤浪晋太郎を序盤で打ち崩して勝ったのが大きかった。前日の試合を1点差で落としておりゲーム差は6・5だった。しかし5日の大勝でゲーム差は7・5、勢いがついて7日の試合も競り勝ち、阪神に引導を渡した格好になった。

 それにしても藤浪はどうしたのか。変化球はストライクが入らず、置きにいったストレートを狙い打たれていた。とにかくすっぽ抜けが多かった。あれだけの素質と実績のある投手だ。立ち直ってほしい。

 原監督、少し遅くなったけど、「おめでとう」。11日のヤクルト戦に勝利して川上哲治元監督を超える球団最多の監督勝利数となる「1067勝」を挙げた。

 川上さんを超える監督が出るとは思っていなかった。というのも川上さんが14年間監督をやったように年数が必要だからだ。巨人の場合は結果が出ないと監督交代となる。

 原監督は3度目の登板で14シーズン目の記録更新となった。私、3度目の登板はないと思っていた。だが、球団は原監督の持つ「野球運」の強さにかけたのだろう。その期待に応えたのだから大したものだ。

「名監督」である。

 勝つためにはたとえ主力の坂本、丸であっても送りバントを命じる。チーム全体に点を取るという指揮官の強い意志を示す。一部に論議を呼んだ8月6日・阪神戦での内野手・増田大輝の登板。外野からあれこれ言われるのを承知して、中継ぎ陣を休ませたいという考えを貫いた。9月7日の阪神戦では3点リードの7回2死一、三塁。一発のある左打ちのジャスティン・ボーアが打席に入っていたが、その打席途中で右の大竹から左の大江に代えた。勝てると判断すれば一人一殺の投手リレーにも打って出る。

 すべては勝利のためで、しかも長年の経験が裏打ちされている。決断も早い。

 今季は「選手を育てながら勝つ」方針を鮮明にしている。松原聖弥のようにファームから上がってきた選手は必ず使う。チャンスを与える。川上さんのV9時代は、「ファームから這い上がって来い」が基本で、上がってきてもなかなか使おうとしなかった。

 それに最近はある程度、コーチに権限を持たせている。例えば、投手陣は宮本和知チーフ・コーチを信頼して任せているようだ。

 これが結構、難しい。巨人監督時代の王(貞治)さんはチームのすべてを掌握しようとしていた。王さんは水原(茂)さんや川上さんを見てきたが、二人は「監督は絶対的な存在である」の考えだった。影響を受けたのだろう。

 原監督はアマチュア球界の名将として知られた父の原貢さんの姿を見て、「監督とはいかにあるべきか」と勉強したと思う。いま、その努力が大きく結実した。これからも確実に一歩一歩前に進んでほしい。15日、阪神戦の先発は菅野、そして左腕の高橋遥人だ。開幕戦と同じカードでマジックを点灯させることができるか、注目だ。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集