「農業アイドル自殺訴訟」で場外乱闘 タレント弁護士がちらつかせた“月9出演”話

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被告側弁護士は「弁護士倫理上問題ある行為」と指摘

 佐藤弁護士からすれば、“寝返った”ということになるのだろうが、身から出た錆であろう。

 被告側代理人の渥美陽子弁護士は、語気を強めてこう指摘する。

「訴訟の関係者が、弁護士に陳述書のサインをお願いされて断った場合、普通の人は、弁護士が関与しているのだから、陳述書の内容が勝手に裁判に出されることはないと思うでしょう。それを弁護士が表紙だけ差し替えて無断で裁判に提出するということは、弁護士に対する信頼を裏切る行為だと思います。また、音声データで明らかになっていますが、佐藤弁護士は橋川さんからの陳述書を取りたいがために、『月9』話を持ちかけています。『月9』出演といった利益供与をちらつかせてサインを迫るような手法も含めて、弁護士倫理上問題ある行為と考えます」

 しかし、実際のところ、この何とも怪しい「月9」話でどれだけ橋川さんの心が動いたのか、という点は気になる。橋川さんはこう本音を明かす。

「そりゃ、私だってあんな夢物語をそこまで真に受けて聞かないですよ。だってそもそもエキストラですよ。佐藤先生はそこから道が開けていくみたいに大きな話をしていましたが、はじめから胡散臭いと思って聞いていました。もっとも、私もアイドルをやっていましたし、その場では大人たちの話に『えー、すごい』とか話を合わせることもできるので、佐藤先生からすると乗ってきているように見えたのかもしれませんが」

 実はこの音声データは、現在YouTube上で公開されており、hプロのホームページから誰でも聴くことができる。公開されることになった経緯を渥美弁護士が説明する。

「8月21日、『FRIDAY』が、“同意していない内容が証言として裁判所に提出された”と訴える橋川さんのコメントが入った記事を掲載しました。すると即日、遺族弁護団は、ネット上に、橋川さんが『FRIDAY』の取材に対して虚偽の内容を述べたと読み取れる内容の声明文を発表したのです。橋川さんの名誉を毀損する内容であり看過できないとして、本件訴訟の被告であるhプロ社長が橋川さんに代わり、彼女の名誉を回復するための証拠として公開しました」

 なんとも激しい場外乱闘が続いている次第だが、食い違う「聴取報告書」と「陳述書」の真実性については、今後の法廷で争われるのでその決着を待ちたい。

レイ法律事務所で取材に応じた佐藤弁護士。その言い分は……

 本稿で問題としたいのは、音声データにある佐藤弁護士の「月9」発言の真意だ。渥美弁護士が指摘するような利益供与を意味する内容だったのか。また、橋川さんの同意を得ぬまま「聴取報告書」を法廷に提出したことについて、どのように考えているのか。文書で質したところ、佐藤弁護士はレイ法律事務所で取材に応じ、こう答えた。

「私は弁護士倫理や法律に反するような発言をしたとは思っておりません。私たちが橋川さんたちとお話ししたのは計3回あり、この録音データに記録されているのは3回目の一部分です」

 佐藤弁護士が言うには、それまでの二回のやり取りの中で、昨年10月に行われた萌景さんの「追悼イベント」をサポートとしてほしいという要望が、橋川さんの所属事務所からあったことが重要なポイントなのだという。

「『月9』などの芸能活動の話は、イベントのサポートの延長線上にあった話なのです。橋川さん自身も二度目に私と会ったときは『プッシュお願いします』『タレントとしてお互い共演しましょう』などと前向きに話していました。つまり、この録音データの中にある『月9』の話は、以前のやり取りを踏まえて出てきた話で、裁判や陳述書とは関係のない別個の話なのです。実際、私は音声データのなかでも、陳述書にサインする代わりの対価として『月9』を明示するような趣旨の発言は一切しておりません」

 では「聴取報告書」については、どう答えるか。橋川さんが怒るのはもっともではないかと記者が聞くと、

「橋川さんの主観については、お答えする立場でないと思います。私たちとしては萌景さんの自殺した原因の真実を発見するために必要だったと考えております」

 と、答えるのであった。

 佐藤弁護士は17年に設立された「日本エンターテイナーライツ協会」という団体の共同代表理事である。同会の設立趣旨には「芸能人の権利・地位を守るため」とある。大切な仲間を失いながらも、悲しみを乗り越え、ご当地アイドルとして活動を続けていた橋川さんも、彼が守るべき芸能人の一人だったのではないか。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月7日掲載

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