マスク転売解禁から一週間、50枚4000円“バブル”に沸いた新宿・新大久保の今

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 8月29日、国民生活安定緊急措置法に基づくマスクの転売規制が解除された。「ヤフオク!」「メルカリ」などのフリマサイトは引き続きマスクの出品を禁止するとしているものの、3月15日より続いていた法的な縛りは、なくなったことになる。一時はバブルに沸いたマスク市場の「今」を、流通アナリストの渡辺広明氏が取材した。

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 転売規制解除について、政府は「品薄状態が解除された」ことを理由のひとつに挙げています。

 転売が再びOKになったことで、マスクの価格は上がったのか、下がったのか。通販サイト上のマスク価格をまとめて比較できるサイト「在庫速報.com」のデータでは、解禁された8月29日を境に、平均価格は一枚当たり11円から10円に値を下げています(図)。これは送料分を反映した価格であるとのことです。

 コロナ禍以前にドラッグストアで売られていたマスクの価格は50枚入り500円から600円でしたから、品質はさておき、価格だけをみれば、ほぼ元に戻ったといえるでしょう。ただ、解禁によって価格が落ち着いたのか、落ち着く見通しが立ったから解禁に踏み込む判断がなされたのかは“卵が先か鶏が先か”に近いものがあるので、なんとも言えません。

 ここに至るまでのマスクの状況を、改めておさらいしておきましょう。

 マスク価格が高騰した背景には、生産地である中国で原材料の不織布「メルトブロー」が不足したことがありました。中国の通信社CNSが3月末に報じたところでは、当時価格は10倍以上にもなっていました。

 こうしたバブルを受け、中国ではマスクビジネスに参入する業者が次々と現れましたが(その数1万社ともいわれます)、大手ドラッグストアを始めとした日本のチェーン小売業では、新規参入業者のマスクを仕入れることはありませんでした。品質や製品管理に不安があるためです。結果、行き場を失ったマスクの在庫は、東京・上野のアメ横や、新大久保などのエリアに流れていきました。ですから、これらの地域では、マスク不足が言われていた3月末時点でも、マスクは店頭に並んでいました。いわばマスクの“聖地”だったわけです。

 先に触れたとおり、ネット上のマスク価格は、もうほぼ元に戻ったといえます。では、新大久保のリアル店舗ではどうなっているのでしょうか。

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