安倍と麻生の石破茂への“ふか~い恨み” 政策より“好き嫌い”で決まる自民党総裁選

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首相は険しい表情

 8月7日の自民党代議士会でも、石破氏は安倍首相の責任を追及した。8月8日付の読売新聞によると、

《小坂憲治政調副会長(津島派)や石破茂・元防衛長官(同)も「(首相が)何を反省するかが大事だ。それを明らかにしてほしい」と批判した。首相は険しい表情でこうした意見を聞いていた。》

 さらに同じ11日付の産経新聞では、「【単刀直言】石破茂元防衛庁長官 国民政党の地位失った」記事の中で、厳しく安倍首相の責任を追及している。

《一度政権を失えば簡単には戻れない。(中略)このまま自民党のイメージがどんどん悪くなり、結果的にそんな政権を作ることに加担していいのか。》

《参院選は安倍首相自らが「政権選択の選挙だ」と言ったことで性格が変わってしまった。候補者の人柄や実績と関係なく結果が左右された。選挙でなぜ負けたかを徹底的に分析しなければ次はない。なぜ負け、どう改めるかを首相が早急に示す必要がある。》

《首相が地位に恋々としているとは思わない。強い使命感があるのだろう。ただ、選挙で民意が示された以上、無視することがあってはならない。》

 まさかこの発言がトドメを刺したわけではなかろうが、2日後の13日、安倍首相は慶応大学病院に入院した。

麻生擁護から造反

 2008年9月に首相に就任した麻生氏の場合はどうか。09年5月に民主党の代表が小沢から鳩山由紀夫に代わると、自民党は大型地方選挙で6連敗を喫し、内閣支持率を急低下させた。そのため、自民党内で麻生首相への退陣要求が高まった。いわゆる、「麻生おろし」である。

 7月12日の都議選で自民党が大敗すると、「反麻生」の中川秀直、加藤紘一らが、総選挙前に総裁選を行うために両院議員総会開催に賛同する議員を募った。総裁選前倒しは、麻生に代わる別の総裁を擁立すること意味する。これに対し、麻生首相は7月13日、21日に衆院を解散し、8月30日投開票の日程で総選挙を行うという「解散予告」をした。

 当時、農水相だった石破氏は、7月11日、北海道釧路市で麻生首相を擁護する講演を行っている。12日付のサンケイスポーツによると、

《石破農相は「昨年(の総裁選で)、みんなで麻生太郎に決めた」とこれまでの経緯を強調し、麻生首相を擁護。「あれが悪い、これが悪いと言う暇があれば、われわれがどれだけのことをやり何を目指すのか、1人でも2人でも説得するのが自民党の責任だし、公明党への信義だ」と述べた。》

 ところが、その舌の根も乾かないうちに、180度方針転換。講演の4日後の7月15日、石破氏は与謝野馨財務相と一緒に、両院議員総会開催に賛成する署名をしているのだ。16日付の毎日新聞によると、

《与謝野氏、石破両氏は15日、首相官邸に麻生首相を訪ね、約40分間会談。地方選連敗を統括するため、総会開催に応じるよう促した。》

「麻生さんからすれば、大臣に起用した石破氏の造反はかなり屈辱的だったでしょう。現在、石破派に属する後藤田正純さんや平将明さんも麻生首相に退陣を要求していますから、石破派に対する麻生さんの恨みはかなり深いものがありますよ」(政治部デスク)

 結局、両院議員総会は開催されなかったものの、予定通り21日に衆院は解散され、自民党は大敗。下野することになった。

 田崎氏は「当時の石破さんの判断は間違っていなかった」とも解説している。自民党総裁は、政策は二の次で、所詮好き嫌いで決まってしまうというわけである。これが日本によって良いのかどうか……。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月6日掲載

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