“岡田健史の夏”を締めくくるドラマ「いとしのニーナ」最終回の見どころ

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

「MIU404」では、刑事局長の息子というエリート青年役

 本日最終回を迎える「いとしのニーナ」(フジ)。今クールでは3本のドラマに出演し、視聴者にその存在を強く印象付けた岡田健史主演の、「一見、見目麗しい若手を集めたポップな青春ラブストーリー」だが……。「題材は今扱うべきものであり、しっかり重い」という吉田潮氏が最終回の見どころをお伝えする。

 今夏は岡田健史祭りだな。一昨年「中学聖日記」(TBS)で教師に恋をする中学生役を演じて、一躍注目の若手俳優になった。

 あのときは純朴な凶器といった印象。着々と経験を重ね、この夏クールは3本の連続ドラマに出演していた。

 NHK BSプレミアムの「大江戸もののけ物語」では主演、旗本の次男だが、妖怪大好き・剣術苦手でへっぴり腰。妖怪や子供と持ちつ持たれつ、っつう子供向け時代劇。

 そして、私の大好きな「MIU404」(TBS)では、機動捜査隊のメンバーで、刑事局長の息子というエリート青年の役。

 頭でっかちの面倒くささと若い感性、父の支配に従わざるを得ないキャリア組の憂いを見せた。で、最もしっくりきたのが「いとしのニーナ」(フジ)だった。

 イケてない平凡な高校生の役なので、もちろん疑問はある。「めっちゃイケメンじゃん! つうかイケメンばっかりじゃん!」とツッコミもある。

 それはさておき、とにかくヘタレなアッツ(岡田)は、幼馴染のマサ(望月歩)がしでかした、とんでもない蛮行の尻ぬぐいに巻き込まれる。

 通学時に見かける憧れの女子高生・ニーナ(堀田真由)に恋心を抱いていたマサは、同級生で荒くれものの牛島(笠松将)に脅されて、なんとニーナを拉致監禁してしまうのだ。

 気のせいか、夏ドラマは若い女性が酷い目に遭う設定やエピソードが多くて、正直、辟易していた。「いとしのニーナ」も拉致監禁から始まったので、目くじら立てようと意気込んでいた。

 ところが、それをきっかけに登場人物たちに広がる感情の渦は捨て置けないと思ったのだ。

原作の漫画は「あなたのことはそれほど」などのいくえみ綾

 原作の漫画はいくえみ綾。他にも「あなたのことはそれほど」(TBS・2017)や「G線上のあなたと私」(TBS・2019)がドラマ化されている。いずれも好みだったので、俄然興味をもって観るようになった。

 で、拉致監禁だが、牛島が到着する前にアッツがニーナを逃がす。レイプはしていないが、だまし討ちで手足を縛り、口を塞ぎ、拉致したことは完全に犯罪だ。

 アッツは彼らの蛮行をひたすら謝罪する。ニーナは罵詈雑言を浴びせながらも、アッツをボディガードに任命。アッツは憧れのニーナを守ろうと英雄気取り、それが恋に発展していく。

 ふたりは付き合うことになるのだ。一方、牛島は他にも婦女暴行事件を起こしていて、逮捕される。富裕層の父が手を回し、示談となるが、学校は退学に。脅威は去って、無事一件落着……じゃねーぞ! 終わらせねーよ! というのがこのドラマの見どころだ。

 まず、ニーナが負った傷は深い。どんなに強がっても罵詈雑言を吐いても、拉致監禁された恐怖は心を侵食し、夜は眠れず、PTSDもある。でも、この国ではなぜか被害女性が責められる。そこに対するニーナの憤りをきっちり描写。

「私が悪いの? ミニスカートもはかないし、化粧もしないし、なんだったら顔も肌も隠して、バカでいやらしい男たちを刺激しないようおとなしくしてればいいんでしょ!」

「バスの中で痴漢をされて、相手に『やめてください』と言ったら、去り際に『誘いやがって!』と吐き捨てられたことがある。母親に話したら、短いスカートをはいているからだ、と言われた。自分が汚いものになったみたいで、悔しくて泣いた。あの時の言葉はずっと忘れられない」

 という話を吐露する場面、堀田が被害女性の心の声を体現していたと思う。

 さらに、援護射撃もちゃんと入れてニーナを孤立させない構図になっていた。アッツや牛島と同じ高校の女子・山田うた(古川琴音)は、牛島の婦女暴行事件について熱く憤る。

 この古川が独特の口調で、毅然と訴えるのが印象的だ。

次ページ:望月歩と笠松将は、今後成長株と言える実力派俳優

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。