「コロナはピークアウト」政府分科会が発表 本当に恐れるべきは「かくれ熱中症」?

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「7月下旬が感染のピーク」

 8月20日、政府の分科会の尾身茂会長は日本感染症学会のシンポジウムで、いまの感染の流行は「全国的に見ればだいたいピークに達した」と発言。翌日には分科会が「7月下旬が感染のピーク」と発表した。

 実は、本誌は7月22日発売号で、すでに〈ピークは7月末にきます〉と明記していた。それは大阪大学核物理研究センター長、中野貴志教授による感染予測であった。感染の拡大と収束の速度を測るメーター「K値」によると、中国由来の第1波、欧米由来の第2波の収束後、6月下旬に東京の新宿を“震源”とする第3波が到来。それが収まる前、7月6日ごろに第4波が立ち上がったが、そのピークも7月末だという見通しだったのだ。あらためて中野教授に尋ねると、

「早い地域で7月下旬、全国的にも8月初旬にはピークを越えていました。今回の流行は国内発生で、地域によっては感染源がダラダラと流入し続け、第5波が発生して波も高くなりましたが、首都圏を除けば小さな流行でした。今後新たな波が発生するかどうか、予測できませんが、緊急事態宣言やそれに伴う自粛がなくても、一つひとつの波は、現状の用心と対策で自然に収束へと進む。日本における自然減の傾向は、より明確になると思います」

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授も、こう話す。

「中野先生のK値は、ピークの時期をピタリと予想しましたね。僕も7月下旬から8月上旬にピークアウトすると予想し、YouTubeで発表していました。尾身先生の発表は少し遅いと思いましたが、安全に配慮したのでしょう。重症者数もピークアウトしたはずで、増えて注目された大阪の重症者発生数も、8月中旬にはピークを越えたと思います」

 だが、そう言われても、一度心に棲みついた新型コロナへの恐怖心は拭えない、というのが多くの日本人のようだ。内科、循環器内科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏が言う。

「私は以前、雑誌の取材で、“コロナは怖いですか”と聞かれ、“社会的に怖い”と答えました。病気そのものよりも社会的な空気や圧力が怖い。感染症学者の方々は最悪の想定しかしません。単純計算で“何十万人死ぬ”という数字ばかりを突きつけられたら、そういう空気になります」

 怯えすぎに対しては、医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏も、

「恐怖は植えつけるのは簡単でも、根強く残るので取り去るのは難しい。僕ら医療従事者は植えつけた側なので、今後は十分な情報を与えて安心させる、不断の努力が求められます」

 と言って、こう続ける。

「“人間に病気をもたらす最大のものは蚊”だそうですが、蚊を撲滅させることはできません。いまコロナが撲滅するまで戦おう、という人がいますが、それは蚊を撲滅させようというのと一緒で、どこまでも自分たちの生活を犠牲にしなければならなくなります。クラスター対策や水際対策も、感染者は一人も逃さないという感じですが、社会全体がそういう方向に向かうのは危険です」

 風邪の撲滅も、インフルエンザの撲滅も、できないのと同じである。

「いま行っていることをのちに振り返れば、風邪の大規模調査をしていたように見える可能性もある。もっとも、風邪のウイルスである4種の旧型コロナについて、そういう調査が行われたことはないので、一概に比較できませんが」

 さらに森田氏は、

「近年の新しい感染症の流行パターンを見ると、2年にまたがることはほとんどなく、地域ごとに見ると1年とか1年弱で収まっています。ヨーロッパ各国もすでにほぼ収まっている。冬に小山が来ることはあっても、基本的に一度大きな波が来た地域には、もうそれほど大きな波は押し寄せない。感染症の経験則としてそういえます」

 と言い、来年の東京五輪について、こう見通す。

「来夏まで感染が流行する地域は、そんなにないと思う。たぶん、五輪はできるのではないか、と僕は思っています。それよりも熱中症のほうが怖いです。この暑さで走るなんて、自殺行為ですよ」

 今年の都内における熱中症被害を鑑みても、五輪について心配すべきは、むしろ熱中症ではないのか。

 東京五輪を開催できるかどうかのポイントは、感染収束が遅れる国が、代表選考などの準備を十分できるかどうかにあるといわれる。だが、そもそも五輪にゼロリスクを求めるなら、永遠に開催できないだろう。不安な国があれば、集まれる国だけで行えばいいではないか。1980年のモスクワ五輪、84年のロス五輪のように、多くの国がボイコットしたまま行った例もある。アスリートの努力も、五輪による経済効果も、無意味な恐怖心のためにふいにしてはなるまい。

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