元アイドル「林寛子」のカラオケサロンに学ぶ コロナ禍の生き残り術とは

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 再度の感染拡大に、多くの飲食業やカラオケ店が頭を抱えているが、その悩みはカラオケサロンを経営する元アイドルも同様だ。東京・大田区に「ラブリー寛寛(かんかん)」を構える林寛子さん(60)は、あの手この手で生き残りを模索している。

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 彼女のプロフィールを駆け足で追うと、4歳で子役として芸能活動を始め、14歳にして歌手デビュー。「素敵なラブリーボーイ」などのヒット曲で知られ、18歳で映画監督・黒澤明の長男と出会い、20歳で結婚する。43歳で離婚した後、歌手活動と並行してオープンしたのが、「ラブリー寛寛」である。

「この店は、昔、忙しくてファンレターの返事が書けなかった分、恩返しだと思ってやっています」

 とはご本人である。オープンは離婚した4年後の2007年。飲み放題、歌い放題で、男性6千円、女性4千円とお手頃価格、20人も入れば満席のお店で、彼女のミニライブが毎夜、開かれていた。

「お客様はドラマ『がんばれ!レッドビッキーズ』を見ていた世代、50代から70代まで、有給休暇をとって地方から来てくださる方もいます。飲み代よりも交通費の方が高いと思うので、ありがたい限りです」

 休業を余儀なくされたのは、オープン13周年を迎えようとした矢先だった。

「3月30日までは通常営業していたのですが、翌日からは自主的に休業、6月16日に再開しました。都と国の給付金等を4月に申請して1カ月後には300万円が手元に届きましたけど、家賃や経費に消えてしまいました」

 営業再開後のコロナ対策は徹底している。

「店中にアクリル板を張り巡らせています。カラオケを歌うステージもアクリル板で囲っているので、お客様に飛沫が飛ぶことはありません。フェイスシールドをつけたら、見た目はまるで宇宙船です」

カラオケ教室も

 アクリル板に囲まれて歌う光景はなんとも珍妙な気もするが、背に腹は代えられない。

「以前は19時に開店して、閉店30分前の23時半くらいまでは繁盛していたのですが、いまは開店して、1組、2組来られてからパタッと静かになってしまいます。お客様とマンツーマンで歌うことも。向かい合わせでも、もちろん歌います」

 そこで新たにカラオケ教室を始めたという。

「女性限定で、昼間に教えることにしました。入会金もありませんので、1度のみのご利用で来ていただいても構いません。ワンレッスン1時間で1万円。男性でご希望の方は別に店長から指導させていただきます」

 のみならず、

「これからはリモートでの営業も考えていきたいと思っています。お酒は出せないし、カラオケも著作権があるのでできないのですが、ピアノやギターを使って歌ったり、人生相談をしたり、そういったことも企画しないと存続は難しいですね。問題はファンの方がリモートに対応いただけるかどうか……」

 コロナ対策に苦慮する林さんはすでに3人の孫がいる。長女は一時女優として活動し、歌手の松岡充と結婚、2女1男を出産した。

「一番上の孫は18歳。芸能界に行きたい希望はあるみたい。でも、この業界は難関がたくさんあるから、突破口を開くには強い精神力が必要だと伝えています」

 8月3日から、都の時短営業要請を受け、19時から22時までと短縮することに。コロナ禍の突破口もマイク一つでこじ開けるべく、かつてのアイドルは奮闘しているのだった。

週刊新潮 2020年8月13・20日号掲載

ワイド特集「コロナ禍の女」より

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