半沢直樹ナレーション担当「山根基世さん」が語る“ドラマを盛り上げるこだわり”

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 コロナ禍で週末は自宅でのテレビ鑑賞を心待ちにしている人も少なくない。大反響を呼んでいるドラマ「半沢直樹」(TBS系・日曜・21:00〜)。その魅力は、堺雅人、香川照之、及川光博など、前作でも活躍した豪華俳優陣らが織りなす迫力の演技であるが、裏方にも変わらずドラマを支えるプロフェッショナルがいる。その一人が、ナレーションを担当する山根基世さん(72)だ。“えっ、あの人だったの?”と気づかずに観ていた視聴者も多いかもしれない。彼女に「半沢」の魅力について聞いてみた。

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「前作でもそうだったんですが、このドラマの持つ影響力の凄さに、改めてびっくりしています。私は一話で2、3カット声だけ出させていただいているだけなのに、どこに行っても『半沢、観てます!』と言われますからね」

 と、山根さんは話す。若い世代には馴染みがないかもしれないが、かつては『紅白歌合戦』の司会を務めるなど、NHKの顔としてお茶の間で親しまれたアナウンサーである。NHK時代も大河ドラマや朝ドラなどでナレーションを担当してきたというが、

「ナレーションだけでこんなに声をかけられたことなんてありませんよ。そうはいっても、声だけの出演だから、気づいていない人も多いみたいで、この間も付き合いのある銀行マンから『えっ、あの声、山根さんだったんですか!』ってびっくりされちゃいました」

 収録現場のウラ側について聞いてみると、

「私は撮影現場のことは全然わからないんですよ。ただ、編集作業は、毎週ギリギリでやっています。いつもナレーション入れは、放送直前の金曜日か土曜日。この間も、『撮影が押しちゃってスケジュールを変更させてください』って連絡がありましたらからね。『半沢』のすごさは、役者さんたちの演技は言うまでもないですが、それを支えているスタッフ全員のこだわりなんです。福澤克雄監督とは『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系・2014)でもご一緒させていただきましたが、あの時なんて放送日の午前中にナレーション入れをしたこともありました」

難解な金融用語をわかりやすく説明する

 そんな制作陣の期待に応えようと、山根氏もこだわりを持って仕事しているという。

「あのドラマは難しい金融用語がたくさん出てくるでしょう。私に課せられている役割は、難解な言葉をいかにしてわかりやすく視聴者に届けられるかというところ。だから、まず自分がきちんと言葉の意味を正しく理解し、納得して読まなければならないと思っています。先日も、『債権放棄』という言葉がでてきました。『サイケン』『ホウキ』と二語として読むべきなのか、一語として平たく読むべきなのか、悩みました。アクセント辞典には出てませんから、銀行員の知り合いに“現場ではどう言っています?”って聞いたりしてね」

 そんな山根さん自身も日曜日の晩は、放送を心待ちにしている一視聴者だという。

「もちろん台本は読んでいますが、出来上がったものはオンエアで初めて観ますよ。自分のナレーションを聞いて落ち込むこともありますが……。でも、実は私も、このコロナ禍になって人生で初めて、ゆっくりドラマを観るようになったんです。現役の頃は忙しくて、ドラマを観ていると罪悪感にさいなまれるようなところもありましてね。でも、いざ観てみると、ドラマって本当に素晴らしいなと」

「半沢直樹」の持つ言葉の力

 半沢だけでなく、いま流行りの韓国ドラマ『愛の不時着』(Netflixにて配信)にもハマったとか。

「『愛フジ』と同じで『半沢』もすごいテンポで物語が進んでいくでしょう。ハラハラドキドキ、今の時代のスピード感で展開しますね。だから『半沢』のナレーションはかなり早いテンポで読まなければならないんですが、それはさておき、そんなスリリングな展開のなかでちゃんとメッセージ性があるでしょう。半沢が“この先の社会の真の担い手になるのはお前たち若い連中なんだ”とか“批判するだけじゃダメだ、どんな世の中にすれば、みんなが幸せになれるのかビジョンを持て”とか訴えかける言葉の持つ力。これって真面目に説教っぽく言われたら、誰も聞かないと思うんです。ああいう戯画化された世界のなかで言われると、カタルシスになって、心に響くんですよね。私はNHKを退職後、朗読などを通して子供の言葉を育てる活動をしてきたのですが、改めてドラマを通して伝えられる言葉の力について『半沢』から教えられました」

 今宵は、ナレーションにも注目して観てみてはいかがだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月23日掲載

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