渡哲也さんを偲ぶ 伝説のドラマ「西部警察」の澤田幸弘監督が語る“大門圭介の演じ方”

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裕次郎さん、渡さん、舘さんという系譜

 もっとも、やさしいだけではドラマは作れない。資金集めなどビジネス的な役割を担う人間も不可欠。それを担当していたのが、やはり日活出身で石原プロの専務だった小林正彦氏(1936~2016)だ。『西部警察』の企画者でもある。

「『西部警察』はカーアクションで車を壊すだけでなく、建物や客船も爆破などによって破壊しましたが、それを可能にしたのは小林さんの力です。日産から車の提供を受けるなど企業とのタイアップを取り付けてくれました」(澤田監督)

 日産の後ろ盾があったから5000台近い車を壊せた。一方で、裕次郎さん演じる木暮課長が乗るガゼール・オープンを提供したのも同社。スカイラインジャパンをベースにした大門軍団の初代特殊車両・マシンXなどもそうだ。

 ヘリは朝日航洋が用意。大門軍団の頼もしい一員・鳩村刑事役を演じた舘ひろし(70)の愛車であるオートバイのカタナはスズキが提供した。

 その舘のことを澤田監督は気遣う。

「一番ショックを受けているでしょう。よく知られている話ですが、渡さんが1964年に日活入りした際、憧れの裕次郎さんに挨拶に行くと、既に大スターだった裕次郎さんがわざわざ立ち上がって、『よろしく』と言い、握手を求めた。青山学院大の空手部出身で体育会系の渡さんは、これに感動しました。渡さんも舘ひろしさんとの出会いで、同じように接した。ラグビーをやっていて、同じく体育会系の舘さんも心打たれた。裕次郎さん、渡さん、舘さんという系譜があるんです」(澤田監督)

 渡さんが裕次郎さんから社長を受け継いだ石原プロは、来年1月に解散することが決まっている。舘は7月21日、新CMの発表会見で、「今も俳優として何とかやっていけているのは渡のおかげ。それがぶれたら自分が自分でいられなくなる」と胸の内を明かした。今後については「まったく分からない。渡次第」と話していた。

 それから、まだ約1カ月弱。澤田監督が舘を思い遣るのもうなずける。

 その澤田監督ら日活OB、『西部警察』チームも、渡さんの逝去が8月14日に発表されて以来、悲しみに包まれているという。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター、1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長。2019年4月退社。独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月17日掲載

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