コロナ拡散「へずまりゅう」母の嘆き 「私たちの育て方が悪かった…」

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 迷惑行為を繰り返した挙げ句、コロナを撒き散らした「へずまりゅう」こと原田将大(29)。もはや、「迷惑系ユーチューバー」などではない。迷惑、だ。そんな息子を持つ母は涙に暮れている。

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 アポなしで有名人の元へ押しかけ、家族を晒す。「メントスコーラ、お願いします」「動画を回したいんですよ」などと言っては、無理やりコラボを迫る。マスクを着けずに咳きこみ、「コロナ」と低く呟く――。

 そんな男が、7月11日、愛知県警に逮捕された。5月に愛知県内のスーパーで会計前の魚の切り身を食べた窃盗の容疑である。動画に収められたそんな振る舞いに、喝采を送る人もいた。しかし“コロナ拡散罪”を犯して以降、彼に向けられるのは厳しい視線ばかりだろう。

 逮捕後の7月15日、彼の感染が確認された。その前は、6月29日から東京や千葉、静岡、広島、山口の1都4県に滞在。たとえば山口県では、錦帯橋や笠戸島、防府天満宮といった観光地や飲食店に立ち寄っていた。

 山口県で濃厚接触した3名が感染し、愛知県内では以下の8名にうつっている(7月26日現在)。へずまりゅうに同行していた20代の友人男性、逮捕現場の山口県から愛知までの護送車両に同乗した男性警察官3名、警察の留置施設にいた男性の容疑者2名、警察官の妻。そして男性警官が1名。かように、警察官が4名も感染し、100名を超す愛知県警関係者が自宅待機となったのだ。

 そんな男の故郷は山口県防府市。静かな住宅地に建つ実家を訪ねると、

「私たちの育て方が悪かったんです……」

 と、へずまりゅうの母が涙ながらに口を開いた。

「もとは優しい子」

「いまはもう、どうしたらいいか分からんです。近所にも謝ったけど、それでは済まんですし。息子は、(警察もしくは入院先から)もう出てこんほうがいい。出てきたら、私ら夫婦は殺されるかもしれん」

 その怯えの原因は、彼の厚顔無恥な動画のようだ。

「全部は見てないですけど、酷いですよね。本当に申し訳ありません」と、何度も頭を下げる母。コロナをばら撒いたことについては、

「人さまに迷惑をかけて、“どういうこと? なにしよるん?”としか考えられません。私らは寝られんし、食べることもできん。もうどうしたらいいか……」

 しばらく経つと、ポツリポツリと話し出した。

「もともとは優しい子だったんです。小さいころはカメとかカブトムシなんかを飼って。小、中とサッカーをやり、高校と大学はレスリングをやっていました」

 彼は高校3年時の2009年、96キロ級で新潟国体に出場。2回戦敗退だった。

「大学生のころか卒業後だったか、何度か同じ女性を“俺の彼女だよ”と言って家に連れてきたこともありました。いま思えば、そのときに料理とか作ってあげればよかった……」

 その女性とどうなったのかは分からないという。

「地元の大学を出てからはスーパーで販売をやっていましたが、その後は職を転々としまして。今年の春に勤め先からの連絡で退職を知ったんです。以来、昼は就職活動、夜は居酒屋でアルバイトをして、山口県内で一人暮らしをしているとばかり思っていました。それがあんなことをしていたなんて。近くに住んでいると思っていたから、“雨が降るから気をつけて”とか、“傘持ったかい”とかメールしてました……」

 週1回ほど、メールでやりとりしていたという。

「でも、誕生日には“お誕生日おめでとう”って連絡をくれましたし、母の日にカーネーションやケーキをもらったこともあります。最近では6月8日、車検の車があったので帰ってきたんですが、そのときは仕事があるからと、すぐ戻ってしまいました」

 7月4日のメールを最後に息子と連絡がつかなくなり逮捕をテレビで知った母。地元の観光地の名を挙げたが、言葉にならなかった。

「錦帯橋、家族で行ってお昼を食べたりしたんですよね……。防府天満宮、近いし……。いまはどうすればいいか分からんけど、私はあの子を産んどるし……」

 何が息子を変えてしまったのか。母はそれが分からず、懊悩している。

週刊新潮 2020年8月6日号掲載

ワイド特集「不条理劇の舞台裏」より

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