リニア新幹線を“通せん坊”の川勝静岡県知事、国が画策し始めたウルトラC

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 最終的に東京と大阪を結ぶJR東海のリニア中央新幹線。総工費9兆円に達する大事業は、2027年の開業を目指している。しかし、その計画に暗雲が垂れ込めている。静岡県の川勝平太知事(71)の反対で、建設工事に着手できないからだ。もちろん、この通せん坊を国がスルーするはずがなく、“強硬突破”を唱える声が上がっている。

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 静岡県側は「南アルプスを縦断するトンネル工事で県内を流れる大井川の流量が減少する」と主張して、一切の工事着工を認めていない。

 東京〜大阪を70分未満で結ぶ夢のリニアは27年に東京〜名古屋で開業し、37年に大阪まで延伸するというプランだ。これに対し川勝知事はJR東海の金子慎社長との会談でも工事を認めず、「27年開業」が危ぶまれている。

 すぐさま国交省の藤田耕三次官(=当時)も川勝知事と会って折衝したものの、「県を迂回するルート変更」という相当な高いボールを投げる知事に、藤田次官は「議論する段階にない」と答えるばかりで議論は全くの平行線。

 官邸関係者によると、
「JR東海の社長でダメなら官邸に極めて近い葛西さん(敬之・取締役名誉会長)とか、国交省の次官で無理なら菅さん(義偉官房長官)とかに出張ってもらってという意見もないわけではないですが、“川勝さんと話しても難しいってことだから、具体的に国のプロジェクトを実行できるようにやるまで”という強硬論が官邸からは浮上しているのです」

 つまり、「法定受託事務」を県から召しあげること。どういうことか?
「河川法は国から都道府県知事に執行が委ねられています。ごく簡単に言えば、この権限を川勝さんから取り上げた上で、県に代わって国がJR東海に建設認可を与えるというものですね。当然、川勝さんは国との訴訟に打って出るわけですが、それを見越してプランを検討しているところです」

 何よりもまず、この夢のリニアの貫通を見越して、名古屋では再開発事業が進んでおり、大阪でも2025年の万博を経た後の延伸は大歓迎。憲法改正の支持政党として、大阪維新の会との連携を深めたい安倍晋三首相としても、「工事頓挫」はもってのほかで「工事延長」でさえ看過しがたいことなのだ。

「川勝さんは第1次安倍内閣の教育再生会議の有識者としてメンバー入りしており、そこには葛西さん(前出・JR名誉会長)もいました。だから、知らない仲ではないどころか、官邸の面々とも繋がりはある。川勝さんがリニアに反対する理由として、彼がガンコだからとか色々言われていますが、どうでしょうか。確かに異色の人ではあるものの、自分にとってメリット・デメリットを考える人であることは間違いない。大井川の流量とか環境のことじゃなくて、リニアは静岡県内をスルーするから県にとって何のメリットもないってことじゃないですかね」

「このまま反対し続ければJR東海が折れて、補償金を目一杯出してくれるという算段もあるかもしれませんが、官邸はやると決めたら容赦はしない。来年の知事選に川勝さんが出てくるなら対抗馬を出すでしょう。仁義なき戦いは始まっています」

週刊新潮WEB取材班

2020年8月2日掲載

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