法律を時代に合った形に作り変える――金丸恭文(フューチャー会長兼社長 グループCEO)【佐藤優の頂上対決】

ビジネス 週刊新潮 2020年7月23日号掲載

  • ブックマーク

理系と文系の国際標準

佐藤 そこは教育が必要でしょうね。

金丸 そうです。まずはソフトウエアに携わる人を増やさなければならない。だから、義務教育でプログラミングを必修にすることを提案して、それがようやく今年から始まりました。ただ、6年も掛かりました。これにも紙は文化だとかで反対する大人たちが大勢いたんです。環境が整っていないとか。

佐藤 反対する理由はいくらでも見つかりますからね。

金丸 でも目に見えないものの価値がどんどん高まっていく中、何もしなければ国際競争には勝てません。

佐藤 そもそも日本は理系より文系に偏っていませんか。

金丸 はい。中国は7、8割が理系なんですね。日本とは逆です。せめて半々くらいにしておかないとダメだと思っています。

佐藤 国際的に見ると、文系というのは超エリートの集団です。

金丸 そうですね。

佐藤 日本で国文学をやるにしても、本来なら古典研究を外国語で発表して、世界に発信しなければならない。哲学も宗教学もそうで、日本のマーケットの中でやる仕事ではありませんよね。二流、三流の文系は、高等教育で想定されていない。

金丸 逆に理系は、超エリートから一般的な学力の人まで、それに応じた仕事があり、裾野が広いんです。だから理系に行った方がより多くの人が仕事に就けます。それはGDPに直結する。だから文系を狭き門にして、超エリートのみがそこを目指したほうがいい。

佐藤 経済学部や商学部で、ジョセフ・スティグリッツやグレゴリー・マンキューの経済学の本を読んでもあまり意味がない。それよりは簿記3級でも取ったほうがいいんです。私が教えている同志社大学の大学院生は、神学部ですが、簿記3級を取って、今度は2級を受けようとしています。なぜかというと、3級だと工業簿記がない。だから、原価計算や在庫管理ができないんです。

金丸 実はフューチャーの新入社員は、入社前に簿記2級を取ることが必須です。おっしゃる通り工業簿記が重要だからです。これはわりといまのトレンドですね。

佐藤 いわゆる文系の人たちでも言語関係の学部や法学部の学生は、エンジニアになりますね。

金丸 哲学とか心理学を学んだ人も向いています。目に見えないものの価値が増している中で、哲学や理論の価値は増している。やはり本質的なものがデジタルに実装されなければなりませんから。

佐藤 しっかりした学説や理論は、サイエンスの領域に近い。

金丸 私はいま、文科省の国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の座長も務めています。大学はもっとも変わっていない世界の一つですね。

佐藤 イタリアの哲学者グラムシに「ヘゲモニー」という概念があります。国家権力とは違い、閉鎖集団それぞれの中にある価値体系や権力を指す。大学にあるのはまさにヘゲモニーで、これは人事に手をつけないとダメでしょうね。例えば教員を公募制にする。そして任期制も盛り込む。また大学の紀要はなくしたほうがいいですよ。世界の大学で紀要というおかしなものがあるのは日本だけです。研究の発表媒体は、学会誌に統一しないといけない。

金丸 やはり思い切った施策を行わないとダメでしょうね。

佐藤 私は個人的にもっと乱暴なことを考えています。私立大学に関しては、学生の成績上位2割の授業料を免除して、さらに上位5%は、月に30万円を給付してもいい。そのかわり、追試を受ける学生からお金をどんどん取る。その人の学力を引き上げるのに、労力とお金をかけているわけですから。

金丸 そうですね。中国は、何事もダイナミックにやっています。日本はチマチマやっていては後れを取るだけです。

佐藤 中国だけではなく、韓国も気にしたほうがいい。

金丸 デジタル化は韓国が圧倒的に先に行っていますからね。またベトナムなど、アジアの国々も学んで追いついてくるでしょう。

佐藤 日本はある程度の経済力があって、海外展開を考えなくても、国内で済んでしまうところが問題です。

金丸 中途半端な規模ですよね。そこが改革を阻んでいるところもあります。

次ページ:成長を阻む法律

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]