解任「北大総長」の反論 「私は文科省にはめられた」

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 騒動に新たな爆弾である。「パワハラ」を起因として文科省に解任された北海道大学の前総長。処分への不服を唱え反論したが、その中で“黒幕”は文科省だ、と告発してもいるのだ。

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 名和豊春・前総長(66)が解任されたのは、6月30日のこと。

 名和氏はセメント会社の出身。母校の大学院工学研究科の助教授となり、3年前に総長に就いた。しかし、翌年には「パワハラ」の嫌疑をかけられ、学内に調査委員会が設置される。同委の認定を受け、同大の総長選考会議が昨年7月、文科省に氏の解任を申し出た。その結論が1年も経ってようやく出た、というわけだ。

 当の北大が公表しないため、「パワハラ」の中身は明らかになっていないが、

「私にかけられた疑いは28件にも及びます。しかし、どれも事実無根です」

 とそれを詳らかにするのは、当の名和氏である。彼の手元にあるリストから抜粋すると、それは、

〇ある部長の業務報告について、「今やらなければいけない業務を放棄している」と威圧的な言動を行った。

〇別の部長の報告に対して激高し、「何を考えているのか」「メモを取るな」と威圧的な態度を取った。

〇北大で使用する電気の供給業者について、ある社が落札したにもかかわらず、合理的理由もなく「取り消せ」と指示した。

 といったもの。

 しかし、名和氏は言う。

「実際の会話のほんの一部分を切り取っているか、文脈が捻じ曲げられているものばかり。例えば、電力会社の件は、経緯や落札した会社の能力が不明だったので指示しただけです」

 加えて、

「調査委員会は当事者の自分に弁明の機会を与えず、『パワハラ』を認定した。後に調査委員会が関係者に聞き取りしたメモも見ましたが、誘導や誤導質問ばかり。調査の体を成していないのに呆れました」

“お前なんか辞めろ”

 今後、前総長は、解任は無効と訴訟を起こす予定とか。「パワハラ」の有無はそこで明らかになるだろうが、後ろには文科省がいるのではないかと、名和氏の矛先は、更に“上”へと向かう。

「文科省は近年、予算の削減による大学教職員数カットや、総長権限を強める方針を取ってきました。しかし、私は、逆に教員を多く雇ったり、権限強化に反対したりしてきた。パワハラ追及に熱心だった事務局長は、文科省から来た人でしたし」

 そんな経緯から、ちょっとした言動を「パワハラ」へと歪曲、悪用されたのでは、と訴えるのである。

「実際、解任まで文科省はさまざまな嫌がらせをしてきました。私へのヒアリングの際も、2時間しかない中、わざと28項目を30分もかけて読み上げ、反論の時間を少なくした。解任通知も、その4日前に出されていたにもかかわらず、私のところに到着したのは、発表の前日夜で、時間指定便でした。これも弁明の時間を与えないためではないでしょうか」

 当の文科省に聞くと、「指摘は当たりません」。北大も、「お話しできません」(笠原正典・総長代行)と言うのみだが、他方、名和氏の怒りは収まるところを知らない。

「この間のイジメは酷かった。旧帝大総長が集まる懇親会での食事の際、ある次官OBに“お前なんか長く苦しんで辞めるんだ”とナイフで指されながら言われたり、記念撮影の時に、別の大学総長に“来年は写っていない奴がいるな”と言われたり……」

 本件の真偽はともかく、ここ数年、文科省が国立大学法人への統制を強めているのはよく指摘される事実。

 その意味でも、今後のバトルの行方からは目が離せないのである。

週刊新潮 2020年7月23日号掲載

ワイド特集「物語には続きがある」より

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