コロワイド会長が32億円騙し取られた「M資金詐欺」 過去には朝青龍も被害に

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“社風”は一目瞭然

 参考までに、蔵人会長の自社持ち株は18年3月末の時点で約430万株。個人では筆頭株主だったが、19年3月末には約265万株に減少、1年間で165万株を手放している。かりに当時の株価で売却すれば40億円は下らない計算である。あるいはこれが、詐欺の被害に消えたのだろうか――。

“コロワイド発祥の地”ともいえる逗子市の豪邸に住む会長を週末に訪ねると、買い物袋をさげて愛車から降り、邸宅へと戻るところであった。が、本誌(「週刊新潮」)が大声で問いかけても、一顧だにせず玄関へ。

 社内報では「人の声の大きさは、生きる証」と断じていた会長。ここはぜひその“証”を聞かせてほしかったのだが、翌朝は打って変わって、株主総会で議長を務める「実質ナンバー2」の野尻社長が現場に登場。何と会長宅前で“見張り番”を始めたのだから大変だ。本社は横浜ながら社長もまた逗子在住だといい、休日返上で創業者宅に駆け付けてガードマンを務めるその姿は、社風を雄弁に物語っていたのである。

 ともあれ“元気な挨拶”を返さなかった会長に代わり、野尻社長に聞くと、

「(M資金の件は)全然知りませんでした」

 念のため会社に尋ねても、

「コメントすることはございません」

 と、本誌の質問を会長の耳に届けることすら躊躇するありさまであった。

 企業法務に詳しい高橋弘泰弁護士が言う。

「騙し取られたお金が個人の資産であれば、法律上、報告する義務があるとまでは言えません。ですが、実質的な経営トップであるならば、その資質や判断は投資家の投資判断に大きく影響を与えます。ましてTOBの最中であり、道義的な観点からは公表したほうがいいでしょう」

 もっとも、

「経営トップが詐欺に引っかかったと公にすれば、会社のイメージにとって決してプラスにはなりませんし、株価が上がる要素も全くない。となれば、大戸屋HDの株主が、コロワイドが呼び掛けているTOBに賛同するのは難しくなるのでは、と思います」

〈どう生きて行くアホ共よ〉――。3年の時を経てワンマン会長の胸先には、吐いた言葉がそのまま舞い戻ってきてしまったのだ。

週刊新潮 2020年7月23日号掲載

特集「株主にひた隠し! 『大戸屋』買収『コロワイド』暴君会長の『32億円M資金詐欺』」より

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