Netflix「日本沈没2020」は日本ヘイトか、はたまた原作への冒涜か

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ツッコミどころは数あれど、「日本沈没2020」はユニークな作品

 令和の世相や技術が反映されており、インターネットで海外居住者とチャットで連絡を取り合ったり、ユーチューバー・KITEが登場するなどは、20世紀では考えられない設定だろう。ただ、物語進行のためのありえない事象は、リアルという観点から受け入れがたい。

 映画やドラマで登場した自衛隊の救難活動はほぼ描かれておらず、まともに活動しているのは救難船乗船者を仕切っているシーンくらい。後は個々人の頑張りに任せている状況であり、日本政府のみならず海外からの支援が描かれていないというのはおかしい。
 
 かと思えば、日本国民の受け入れ先となる周辺国の中国、ロシアなどの対応は愛に溢れている。大人の余裕すら感じさせる真っ当なものであり、彼らの支援活動が描かれなかったのには違和感を覚えた。

 などなど、ツッコミどころは多々あるが、ここで羅列するよりも作品を見て確かめてほしい。これまで映画化された「日本沈没」とはまったく違った切り口であるが、実写版を見た人なら思わずニンマリとするカットも。
 
「日本沈没2020」は確かにクセのある作品であり、ハマる人とそうでない人が大きく分かれるのではないかと思う。フィクションの中にリアルさを求めるのはナンセンスであるともいえるが、キャラクターに肩入れしてナンセンスを受け入れてしまうのは、やはり湯浅監督の世界観を筆者が好きだからだろう。

土田真樹
1989年より韓国に留学。高麗大学大学院を経て文化情報誌ソウルスコープに就職。映画担当記者として活動する傍ら、キネマ旬報、スクリーン、AERAなどをはじめとするメディアに寄稿する他、韓国映画日本語字幕制作、劇場用パンフレットに解説を執筆するなど、多岐にわたって韓国映画情報を日本に向けて発信している。近年は日本映画、韓国映画の製作にも参加しており、最新作は日韓合作映画「ゴーストマスク~傷~」(監督:曽根剛)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月16日掲載

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