テレビ不人気時代だからこそ輝く長嶋一茂 国民的「バカ息子」の成長と変化

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 個人的に長嶋一茂のエピソードで一番思い出すのは、自宅に「バカ息子」と落書きされたというニュースである。引退した女優の元マネージャーによる仕業とのことだったが、ちょっと子どもじみている。身もふたもなさすぎて笑ってしまった。

 2世という出自を売る生き方は、今や珍しくもなんともない。ずるいと言われようと親の七光りは使ったもん勝ち。手っ取り早く自分の顔を売って、メディアに大々的に取り上げてもらうためには賢い戦法ともいえる。数々の2世がそうやってのし上がる一方で、脱落・転落する者も多い芸能界。ただ、偉大かつ意外な2世売りでいつまでも第一線を走り続けているのが、一茂であると思うのである。

 国民的大スター・長嶋茂雄を親に持つ一茂の立ち位置は、「国民的バカ息子」であったように思う。とんねるずにいじられ、明石家さんまにいじられ、おバカぶりを笑われていたものだ。体つきもたくましく、声も大きく明るいのに、中身は子どものままのような受け答え。その姿は、典型的な「育ちは良いが世間知らずのバカ息子」ぶりを表しているようだった。

 そうはいっても一茂は、優秀なプロ野球選手のひとりでもあった。学生時代から活躍し、ドラフト1位で鳴り物入りのヤクルト入団。しかし親の重圧やケガ、パニック障害も発症し、最後は父親・長嶋監督から戦力外通告された。親を超えられない2世選手、そのことを世間よりも本人が、一番コンプレックスに思っていたことだろう。いじられて笑っている時でも、ふとした瞬間に肩身の狭さを見せるような表情をすることもあった。

 が、ここ最近の一茂は変わった。「バカ息子」から「モノ申す」キャラへの変化だ。本来であれば「モノ申す」のはそれなりの地位や知識がないと務まらない。しかし昨今の炎上ブームを思えば、いちばん必要なのは地位でも知識でもなく「鋼のメンタル」である。そこで「バカ息子」ならではの「怖いもの知らずさ」と「親の名前という後ろ盾」はうってつけだったのではないか。その二つを兼ね備え、いかんなく発揮してくれるのは一茂、と白羽の矢が立ったのだろう。

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