「麻生さんの逆張りをしていればいい」ともっぱら噂の財務大臣の政局オンチ

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昨年には「ダブル選」進言、“追い込まれ”がトラウマに

 与党は通常国会を逃げるように閉じ、来年秋の自民党総裁や衆院議員の任期切れに向け、永田町は政局話で盛り上がっており、「9月末解散・10月25日投開票」なるリアルな日程まで出回っている。こういった“早期解散”の震源地のひとつは、安倍晋三首相の盟友・麻生太郎財務相とされる。幾度なく“早期”と首相に進言しているようなのだが、一方で、「ホントに麻生さんの言う通りなの? 逆じゃないの?」と鼻白む声も少なくない。

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「ちょうど1年前の参院選でも、衆院選とのダブル選挙を安倍さんに薦めていたのは麻生さんでした。与党は勝利したということになっていますが、自公と維新を合わせても、憲法改正の発議に必要な3分の2を維持できなかった。野党側の候補者調整がそれなりに功を奏したとも言え、同時に衆院選もやっていたら、それこそ与党だけで3分の2割れして、安倍政権は退陣まで行かないまでも、かなりのピンチを迎えることになったと思われます」

 と政治部デスク。

 麻生財務相が早期解散にこだわった場面はこれまで何度もあり、言うなれば「早期おじさん」。壊れたナントカみたいにその言葉を繰り返すようになったきっかけのひとつが、自身の拭いがたい失敗だった。

「麻生さんが首相になったのは2008年の9月でした。衆院と参院とがねじれて何も決まらない、決められないことに疲れた福田さん(康夫前首相)が内閣総辞職をして、政権を投げ出した後の登板です。解散ができなかった福田さんと違って、選挙の顔として期待された麻生さんは自民党総裁選でも他の候補を圧倒しました」

 当時の立候補者には、小池百合子現都知事(3番手)や石破茂元幹事長(5番手、最下位)の顔も見える。

 いわば選挙管理内閣としてスタートして、早期の解散を想定していた中で踏み切れず、一方でサブプライムローン問題からのリーマン・ショック、そして世界を金融危機が飲み込む過程で、その対応に追われ、解散権を事実上封じられてしまった。悪いことは重なるもので、麻生氏が踏襲を「ふしゅう」と読んでしまって“漢字の読めない首相”とあだ名されたり、盟友の中川昭一財務相がローマで朦朧とした状態で会見し、醜態をさらしてしまったり、日本郵政社長の進退問題では担当の鳩山邦夫総務相を更迭せざるを得ないなど、閣内でゴタゴタが続いた。内閣支持率はひと桁台に落ちることもあり、党内の重鎮らから退陣要求があったりと、「麻生おろし」の動きが公然と出てきた。

 結局、麻生氏は7月下旬に衆院をまさに“追い込まれ解散”したが、8月30日の投開票で鳩山由紀夫代表率いる民主党に歴史的大敗を喫し、政権を明け渡すことになった。

「そういう負の歴史がありましたから、麻生さんにとってはトラウマのレベルになっていて、“とにかく早くやるべきだ”というのが持論なんです。ま、麻生さんだけじゃなくて、下野することになったあの解散総選挙に関しては誰でもそう言うんですけれどね」

 差し当たって、流れているのは、こんな情報だ。

《自民党は6月下旬に次期衆院選を巡って独自の情勢調査を行った。その時点で解散総選挙があった場合、自民党は30~50議席減ることになる。この数字を見ることができるのは、安倍首相、麻生財務相、下村博文選挙対策委員長、元宿仁事務総長と限られた面々で、みな青ざめることになった》

オリパラ後でも“追い込まれ”にならないように

「私のところにも問い合わせがありましたよ。“自民党が情勢調査やったって聞いてる?”って。『自民党が65議席減』っていう数字もあるみたいで、となると単独過半数(233)に届かないってことなんですね。なかなかうまい数字の設定ですけれど(笑)。その“シナリオ”だと、自民は現有284から219議席に後退し、公明と合わせてやっとのことで過半数に。法案の再可決や憲法改正の発議に必要な3分の2である310議席にはとうてい手が届かない。どこに勝敗ラインを置くかによるが、安倍さんは大敗の責任を取って即退陣だ……みたいなものなんです。“前提がいま選挙をやれば”ってことですからさすがにそれはないですし、選挙好きな永田町の人たちが考えそうなことです」

「麻生さんは確かに安倍さんに『早期解散すべし』と伝えているようですね。2人は6月10日と26日に1時間以上サシで会っていますし、19日にはこの2人と菅さん(義偉官房長官)、甘利さん(明・自民党税調会長)と一緒に食事している。前回の2017年の総選挙前にもこのメンバーで会食していましたから、余計に話が膨らんだ感じがしますね。麻生さんの心のうちは、秋に自民党の役員人事と内閣改造を行って、人心一新した直後に……ということなんでしょうけれど、いずれにしても自民党の数は減りますよね。黒川元検事長の賭けマージャンとか河井夫妻の逮捕・起訴という結構なネガティブ要因を国民が忘れてくれるまで、もうちょっと時間がかかると思うんですよね」

「安倍さんは解散については、今井さん(尚哉・首相補佐官)や北村さん(滋・国家安全保障局長)の話をよく聞いているはずです。彼らは日本のためには安倍さんが必要で、そのためには選挙に勝ち続けなければならないと言って安倍さんを盛り立ててきた。来年に予定されるオリパラ後に、総裁選と衆院議員の任期切れがやってくるわけですが、仮にそこで安倍さんが解散をするにしても、麻生さんの言うような“追い込まれ”と見られない“演出”を当然、考えていますよ」

 そんなこんなで、「麻生さんの逆張りをしていればいい」という当てこすりが永田町や霞が関に出回っているわけだが、

「この前の日本医師会の会長選では、現職の横倉会長が破れる波乱がありましたね。“こんなコロナ禍でタイヘンな時にお医者さんたち何やってるの?”と言われていた選挙ですが、横倉さんが譲ると言ったのに翻意したと対立候補は主張し続けました。横倉さんは安倍さんら政府与党幹部と親しいので、みながそれぞれのルートで翻意を促したんですが、一番声が大きく、横倉さんを土俵に立たせたのは麻生さんと言われていて、そういうのもあって、麻生さんの逆張り……なんて言われているんでしょうね」

週刊新潮WEB取材班

2020年7月6日掲載

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