40周年ミニストップの苦境 名物「ソフトクリーム」と「5円コピー」は切り札になるか

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 コンビニ業界4番手の「ミニストップ」が、いま、苦境に立たされている。昨年は店舗の大量閉店を行い、2020年2月期連結決算では57億円の赤字を計上した。今年で創業40年を迎えたミニストップは、他のチェーンにないサービスで根強いファンも多いが……。

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 今年5月末時点で、ミニストップの国内店舗数は1990店。ここ1年あまりで220店を閉店した。業界3位のローソンは約1万3000店(5月発表値、ナチュラルローソン含むローソン事業)だから、その先に“君臨”するファミリーマート、セブン-イレブンとの店舗数の差はあまりに大きい。不振の背景には、親会社であるイオンと三菱商事が業務提携を解消したことにより、展望が見えなくなったことが大きいと言われている。

 そんななか、ミニストップが始めたユニークな試みが注目を集めている。看板商品であるソフトクリームに特化した専門店「MINISOF(ミニソフ)」をオープンさせたのだ。

 今年3月の「横浜ポルタ店」と「イオンモール京都五条店」を皮切りに、現在は東京、大阪、埼玉に7店舗を構える。今月には名古屋にも開店予定で、来年前半までに100店舗を目指すという。

 MINISOFで販売されるソフトクリームは360円と、ミニストップのソフト(バニラ)235円に比べれば、ややお高い設定だ(ともに税込み、以下同)。ただし、コーンが大きいワッフルになっているほか、いちごやマンゴー、プリンなどのトッピングを選べるワッフルソフト(各490円)や、のむソフトクリーム(390円)など、ミニストップにはないラインナップがそろっている。ソフトクリームはミニストップ創業時からのメニューであり、40年間のノウハウが活かされているという。MINISOFを担当するのは、19年秋に新設された、その名もずばり「ソフトクリーム事業本部」だ。

 6月にオープンした「吉祥寺サンロード店」以外の店舗は、いずれも商業施設のテナントだ。ソフトクリームという商品ゆえ、親子連れが多く集まる場所に出店する計画なのだろう。ミニストップの広報は「売り上げは概ね順調に推移しております」と答える。

「新型コロナの感染拡大を受けて、入居予定であった商業施設などの開業、改装計画が変更されるなど、影響は少なからずあります。出店計画の修正が必要になっていますが、今後も積極的な出店を進める方向に変わりはありません」

 これから夏に向けて、ソフトクリームの需要は増えるはず。しかし、その後気温が下がると、苦戦も予想されるのでは……。

「季節が変わっても、ソフトクリームを核にすることは変えません。年間を通じ、気温が変わっても楽しめるメニューを展開する予定です」

 あくまで「コンビニ事業の代替ではなく、共に成長させる事業」だそうで、ソフトクリーム屋として生き残りをかけるわけではないようだ。

5円コピーの暗雲

 ソフトクリームにくらべるとやや地味だが、ミニストップにはもうひとつ、ファンの多いサービスがある。「5円コピー」だ。

 ミニストップ以外のコンビニのモノクロコピーは、サイズを問わず1枚10円。だがミニストップだけはA3より小さいサイズであれば、1枚5円と半額でコピー可能なのだ。これは2012年よりはじまったサービス。さる30代会社員は「テレワーク中、会社のコピー機が利用できないので助かった」そうで、最近、改めてその安さに注目が集まっている。

 だが、新たな事業を展開するソフトクリームとは違い、「コピー」の前途はやや暗そうだ。コンビニ事情に詳しい流通アナリストの渡辺広明氏が解説する。

「5円コピー、利用者には嬉しいですが、ビジネス的に厳しいものがあります。コピー機を目当てに来店するお客様に他の物を買ってもらう狙いがあるのでしょうが……。他社の優れたサービスや商品をすぐに導入する、誤解を恐れずに言えばすぐ“真似”するコンビニ業界で、大手3社が5円コピーをやらないのがその証拠です。そもそもの話、家庭にプリンターがあるのが珍しくない今、コンビニのマルチコピー機の『印刷』需要は薄れています。セブンでは6月15日から、写真プリントを30円から40円に値上げしたくらいです。いま、コンビニのマルチコピー機は『印刷』から、アニメのブロマイド印刷やシール作成などができる『コンテンツ』、住民票などを発行する『行政サービス』のマシンに役割が変わりつつあります」

 それでも安くコピーできるのであれば需要がありそうなものだが、実はこんな問題を抱えてもいる。

「ミニストップのマルチコピー機はリコー製です。リコーのコピー機をミニストップにレンタル販売し、保守点検などを行っているのは、イオングループの企業『カジタク』です。ところが昨年、カジタクが数年にわたり不正会計をしていたことが明らかになったのです」

 カジタクの親会社であるイオンディライトが今年2月28日公表した「お知らせ」によれば、イオンディライトはカジタクの元代表取締役と元取締役2名を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしてもいる。イオンディライトとカジタクを各原告とする訴訟の請求額は、合計でおよそ6億4000万円にもおよぶのだ。

「ミニストップからしてみれば直接関係のない話です。とはいえ、同じイオングループの企業が不祥事を起こしたわけです。リコーとしては気分のいい話ではないでしょうから、今後も同社のコピー機をミニストップで使い続けることができるかどうか、分かりません。仮にリコーが撤退するとなれば、セブンが採用している『富士ゼロックス』、ファミマ、ローソンの『シャープ』なりを導入することになるはずですが、そちらでも『5円』を維持できるかは非常に怪しい。結局他社と同質化するしかなくなります」

 MINISOFについても、コンビニ事業の穴を埋めるほどの業績は上げられない、という指摘もある。“四十にして惑わず”のミニストップ、置かれた状況はソフトクリームのように甘くはないようだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月1日掲載

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