プロ野球「無観客試合」は選手の士気に影響するか ホームアドバンテージの消滅も

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ファンの声援が消える

 日刊スポーツは5月26日の紙面で、プロ野球の開幕が決まった喜びを、前面に打ち出した。1面トップに「プロ野球が帰ってくる!!」の見出しを打ち、その隣に「120試合」と、大きな文字を踊らせたのだ。

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 日本野球機構(NPB)は5月25日、政府が緊急事態宣言の全面解除を行ったことから、6月19日の開幕を正式に決定した。

 しかし新型コロナウイルスの“第2波”の恐れもある。NPBはシーズン開催にあたり、政府が示した“プロスポーツの緩和指針”に従うとした。

 指針によると、プロスポーツは6月19日から無観客試合の開催が可能、7月10日になれば屋外・屋内スポーツを問わず、観客が上限5000人まで認められる。

 更に8月1日をメドに、屋外スポーツは観客上限の撤廃、屋内スポーツは観客50%の維持――こんな目安を示したのだ。

 観客の“規制”が存在するシーズンなど、長いプロ野球の歴史でも初めてのことだ。当然ながら、勝敗への影響が注目されている。

 そもそも指針通りに進むとは限らない。7月に再び緊急事態宣言が発令される可能性もゼロではないからだ。

 監督や選手の精神的負担は、相当なものがあるだろう。元参院議員でプロレスラーの大仁田厚氏(62)は、ツイッターで以下のように指摘した。

《いよいよ6月19日プロ野球開幕、待ってたぜ。しかし無観客からのスタート(略)どのチームがこの前代未聞の事態の中で優勝するのか? 選手にはモチベーションのキープとメンタルな強さが求められる》(註:改行を省略するなど体裁を改め、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)

「ホームアドバンテージ」という専門用語をご存知だろうか。様々なスポーツで、地元チームの勝率が高い傾向が認められているのだ。

 読売新聞の大阪版は「今日のノート」というコラムを連載している。18年10月29日は同紙の編集委員が、ホームアドバンテージを取り上げた。代表例として、広島東洋カープの勝率を取り上げている。

《セ・リーグ3連覇の広島の勝ち越し数はホームの「20」に対し、ロードでは「3」しかない。2011、15年は6球団すべてがロードで負け越した。逆に言えば、ホームでの貯金の多寡がチーム成績に直結している》

 同じ「今日のノート」は今年5月25日、「無観客の副産物」と題して、運動部の記者がプロ野球の無観客試合とホームアドバンテージの問題を考察した。

 コラムが取り上げたのはサッカーW杯のアジア予選。2012年6月、日本代表は埼玉スタジアムでヨルダン代表と対戦し、6-0で完勝した。ところが翌13年3月、敵地へ乗り込むと、1-2で返り討ちに遭ってしまったのだ。

 なぜホームアドバンテージが起きるのか、コラムは《理由の一つがファンの後押しだ》と指摘する。

 根拠として『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』(トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム著、望月衛訳、ダイヤモンド社)という書籍を紹介する。

 この『スポーツの裏側を読み解く』は、ホームチームを応援するファンの声援は、審判の判定に影響を与えると主張している。

 なぜホームアドバンテージが起きるのか、それは《ヤジを飛ばすファンの重圧から逃れようと、無意識に、審判が反応してしまう》ためだというのだ。

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