パ・リーグ期待の有望株6人 「外野手から投手に転向」「高校時代は陸上部」変わり種に注目

スポーツ 野球

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 いよいよ6月19日の開幕が決まったプロ野球のペナントレース。昨年は投手では山本由伸(オリックス)、高橋礼(ソフトバンク)、野手では村上宗隆(ヤクルト)が大ブレイクを果たし、高橋と村上は新人王にも輝いた。彼らに続くような選手は誰なのか、今年ブレイクが期待される若手選手をあえてルーキー以外から一球団一人ずつ紹介したい。今回はパ・リーグの6球団だ。

 リーグ連覇を達成したものの、不動のセンターだった秋山翔吾が抜けた西武。外野はかなり流動的だが、そんな中で期待がかかるのが川越誠司だ。2015年のドラフト2位で投手として入団したが、高校時代から打撃に定評があり、北海学園大でも外野手としてプレーすることが多かった。プロでも昨年から正式に野手に転向。二軍での打率は2割台前半だったものの、8本塁打を放ち長打力を見せている。さらに、オフに行われたアジアウインターリーグでは15試合の出場で打率.346、2本塁打、16打点と好成績を残して、最優秀打者賞も受賞した。今年で27歳と既に若手と言える年齢ではないだけに、本人にとっても勝負の年となりそうだ。

 野手の世代交代が今後数年の課題となるソフトバンクで期待したいのが高校卒6年目の栗原陵矢だ。春江工(現在は坂井と合併)時代から強肩強打の捕手として注目を集め、2014年のドラフト2位で入団。プロ入り投手は三軍でのプレーが多かったが、徐々に力をつけて二軍の主力となり、昨年は一軍でもプロ入り初ホームランを放った。捕手登録だが、打撃を生かして一塁や外野も守ることができ、脚力も申し分ない。また、本職の捕手としても正確なスローイングには定評がある。長く一軍の二番手捕手を務めてきた高谷裕亮が今年で39歳と大ベテランとなっているだけに、捕手と他のポジションを併用しながら打席数を確保できれば、一気に成績を伸ばす可能性が高いだろう。

 オフに大型補強を敢行した楽天だが、そろそろ則本昂大、岸孝之に代わるエース候補が課題となる。その一番手となるのが藤平尚真だ。2016年のドラフト1位で入団し、1年目から3勝、4勝と順調に成績を伸ばしていたが、3年目の昨年はわずか3試合の登板でプロ入り初の未勝利に終わった。しかし、二軍では19試合に登板して9勝2敗、リーグ3位の防御率2.91と圧倒的な数字を残して最多奪三振のタイトルも獲得するなど格の違いを見せている。好調時の150キロ前後のストレートは数字以上の勢いがある。ピンチで際どいコースや低めを狙いすぎて自滅する悪癖が修正できれば、一気に大化けする可能性はある。高校の先輩で新加入した涌井秀章もライバルとなるが、何とか先発ローテーションに加わりたいところだ。

 ロッテで面白い存在となりそうなのが、6月1日に育成選手から支配下登録された和田康士朗だ。高校入学時には野球部ではなく陸上部に入部し、その後クラブチームを経てBCリーグでプレーし、高校卒1年で育成ドラフト指名を勝ち取った。注目すべきはその成長スピードだ。プロ入り1年目の二軍成績は打率.167、1本塁打、3打点、6盗塁だったが、2年目の昨年は打率.264、6本塁打、20打点、23盗塁と全ての部門で大幅に向上しているのだ。ちなみに23盗塁はイースタンリーグ2位タイの数字である。和田の武器は脚力だけではない。柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせるフルスイングも迫力十分なのだ。チームの外野陣はFAで福田秀平が加入し、若手にも藤原恭大、高部瑛斗など有望株が名を連ねているが、意外な伏兵として今年はさらなる飛躍に期待したい。

 昨年はシーズン終盤に失速した日本ハム。投手陣の立て直しのためにドラフトでは3人の社会人投手を指名したが、既存戦力の中で期待したいのが高校卒3年目の北浦竜次だ。昨年はリリーフで一軍初勝利をマークし、その後3試合の先発も経験した。白鴎大足利高時代は140キロ台前半が多かったストレートが、プロ入り後一気にスピードアップし、昨年は150キロもマークしている。サウスポーらしいボールの角度があり、最近の投手では珍しい大きなカーブを操ることができるのも魅力だ。大型の本格派サウスポーにしては、コントロールもそこまでばらついておらず、二軍ではしっかりと試合を作ることができている。チームには安心して先発を任せられる左投手がいないだけに、今年は開幕からローテーション争いに加わりたい。

 最下位からの巻き返しを図るオリックスで面白い存在になるのがプロ入り4年目の張奕だ。外野手として2016年の育成ドラフト1位で入団したが、強肩を生かして昨年から投手に転向したという異色の経歴の持ち主だ。昨年5月に支配下登録を勝ち取ると、夏場以降は一軍の先発ローテーション入りを果たし2勝をマークした。オフに行われた世界野球「プレミア12」では台湾代表として出場し、2試合に先発していずれも無失点と好投。先発投手部門でベストナインにも輝いている。フォームの良さは外野手としてプロ入りしたとは思えないものがあり、150キロを超えるストレートと鋭く落ちるフォークを武器にした本格派らしいピッチングが持ち味。今年のキャンプでは右肘を痛めて出遅れたが、順調に回復していると伝えられている。張が山岡泰輔、山本由伸の二本柱に続くような存在になると、他球団にとっては驚異の先発投手陣になりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月18日掲載

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