コロナで失業した「中国人向け観光バス」運転手の告白 中国人社長のひどすぎる後始末

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日本語を話せない社長

 Aさんは、労働基準監督署を通じてD社に支払いを督促しているが、事態は進展しない。会社が倒産した場合は、会社に代わって、国が労働者に未払いの賃金や退職金を支払ってくれる「未払賃金立替払制度」により、最大8割まで回収できるのだが、D社は存続しているのでそれもできないという。社長以下の経営陣も“雲隠れ”し、連絡がつかないそうだ。

「そうなると、もともと計画的だったのではないかと疑ってしまいます。過去にも給料の遅配や未払いがたびたびあって、給料を払いたくない雰囲気を感じていました。ですから給与明細をしっかり確認していました。さらにいえば、D社は昨年の9月ぐらいから、雇用保険を国に納めていないことも発覚しました。私達からは雇用保険料を徴収していたにも関わらずです。その頃から会社の経営はおかしくなっていたのかもしれません」

 先の通知文には〈ツアーの回復の様子を見て、ドライバーさんを再雇用させて頂きたいと思います〉ともあるが、その目途は立っていない。

「運転手と違って事務員は『少し減るけど、給料は払うから』と言われて、しばらく残っている人もいたのですが、結局、給料が支払われず、皆、退職しました。D社は会社として存続していますが、資産らしいものもないので、裁判を起こして取り立てるということもできません。社屋は賃貸だし、バスもリースです。交渉しようと会社に行ってみたら、リース会社の人が来ていて『コロナ禍以降、1回も支払いがありません』とこぼしていました。コロナが一段落してもD社は信用がないですね。事業再開は無理だと思いますよ」

 筆者がD社について調査したところ 、3月25日付で中部運輸局から道路運送法違反による2週間ほどの車両使用停止処分が下っていたことが判明した。主な違反内容は、「運賃・料金の収受が不適切だった」「疾病、疲労等のおそれのある乗務をさせていた」「転者に対する指導監督が不適切であった」「運行記録計の記録をしていなかった」「運転者の勤務時間及び乗務時間について、基準を遵守していなかった」等である。

 トラブルだらけのD社だが、「そもそも中国人社長にも問題があるのではないか」とAさんは指摘する。

「成田や関空など空港の近くに営業所のあるバス会社は、D社のような中国系の会社が多いんです。実は社長は日本語も話せない。だから、労基署も社長と話ができないんです。一応、日本語を話せる中国人の部長がいましたが、正直いって、 社長が何を考えているのか、分かりません。こんな酷い扱いをされれば『中国人は日本人と違って自分の金儲けのことしか考えないから、約束やルールを守らないし、何事もいい加減なんだろう』なんて思ってしまいますよ」

 目下、失業中のAさんは、他業種への転職も考えているという。

「知り合いのバス運転手は、今は トラックに乗っている人が多いです。工場の倉庫にある部品などを輸送する仕事は結構あるそうなんです。でも、コロナの影響で生産が止まっている会社が多くて、そろそろ仕事が減るんじゃないかと心配していました。私は就活で、毎日ハローワーク通いです…」

星野陽平(フリーライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月16日掲載

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