湘南「海の家」へのコロナ規制 海水浴場が無法地帯化する恐れも

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法廷でも過剰防衛

 8割おじさんが「接触削減」と叫び続けた影響も大きいのか、いま海水浴場にかぎらず、社会全体が「距離」や「密」に対して、過度に神経を尖らせてはいないだろうか。たとえば、こんな例――。

 緊急事態宣言の解除を受けて、東京地裁の裁判員裁判が3カ月ぶりに再開した6月2日に早速、開廷が2時間半も遅れるトラブルがあったのだが、その理由が奇異であった。取材に当たった司法記者が言う。

「この日、開かれたのは、昨年6月にティッシュペーパーを口に詰めて母親を窒息死させ、殺人罪に問われた女の初公判で、彼女の弁護人2人が、裁判長が着用を求めたマスクをしませんでした。弁護人たちは“全力での弁護はマスクをしていては難しい”と発言。表情も含め裁判官、裁判員に伝えたいという主張で、結局、着用しないことが認められはしましたが、アクリル板を追加設置したりするのに時間がかかったのです」

 東京医科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「ソーシャルディスタンスを守り、弁護人が大声で唾を飛ばすような状況でなければ、マスクをしなくても問題ないと思います。ほかの人はマスクを着けているでしょう」

 矢野医師も言う。

「ソーシャルディスタンスは、厚労省は最低1メートルと定めていますが、法廷の写真などを見ると、弁護人は裁判官と被告、裁判員から1メートル以上離れているように見えます。被告の人生に関わることを全力で弁護したい、という考えも理解できますので、マスクをしなくてもよかったのではないかと思います」

 過剰な労力がいま、日本全国で無数に積み重ねられていると思うと、気が遠くなりはしないか。

 話を海に戻すと、

「死者が3万3千人を超えたイタリアは、今月3日にはEU加盟国からの観光を受け入れ、すでに海水浴をしている人も多い。スペインでも来月から、外国人観光客の受け入れが始まり、人との距離をとりつつビーチも開放する方向です」(在伊ジャーナリスト)

 片や、死者数が伊西両国の数十分の一にすぎない日本では、あたかも8割おじさんの試算が的中してしまったかのような恐れ方である。前出の臼田組合長は、

「みんなで言っています。もうちょっと県が考えてくれないかな、って」

 とこぼす。300万人超の海水浴客がもたらす経済効果は、鎌倉市が試算する1人6千円で計算して180億円。それがゼロになるばかりか危険な無法地帯になる恐れも。いいのですか、黒岩知事?

週刊新潮 2020年6月18日号掲載

特集「コロナという不条理」より

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