玉川徹先輩のこと…「伝説の視聴率男」「愛される悪役」像を後輩が語る

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テレビ朝日課長 玉川徹

「悪名は無名に勝る」を地で行くのが、テレビ朝日「モーニングショー」でコメンテーターを務める玉川徹氏だろうか。一介のテレビ局員がなぜここまで注目されるのか。テレビ朝日で同じ番組を担当し、同じ釜の飯を食った後輩のテレビ・プロデューサー、鎮目博道氏が振り返る。

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 テレビ局でディレクターをしていると、視聴率のグラフを見ることから1日が始まる感じです。その時の気分といったらまるで、学期末に先生から渡された通知表を見るときのドキドキ感に似ています。

 恐る恐る視聴率グラフを見る……ああ、僕のVTRはそんなに上げてないな、ガッカリ。でも僕のVTRの横で、ほぼ毎週必ずちょっと異常なくらい急カーブを描いて視聴率が伸びているものがあるのです。「ああ、また玉川先輩か」と僕は半ば呆れながらそのグラフを見つめます。

 僕はかつてテレビ朝日で「スーパーモーニング」という番組のディレクターをしていました。「スーパーモーニング」は今の「モーニングショー」の前身の番組で、曜日ごとに班が分けられているのですが、僕と同じ班にいて「伝説の視聴率男」として恐れられていたのが玉川徹先輩でした。

 当時、玉川先輩はたしか、帯のように茎が幅広くなったタンポポなど「奇形植物」を毎週のように追いかけていました。僕はといえば毎週のように北朝鮮の脱北者の取材をしていたのですが、どう考えても普通なら「北朝鮮ネタ」の方が強そうなのに、毎週絶対、玉川先輩には視聴率で勝つことができなかったのです。しかも視聴率はVTRよりも、玉川先輩が出演しているスタジオの部分で急角度になっています。どう考えてもそんなにイケメンとは思えませんし(スミマセン)、結構苦情の電話もかかってきている様子なのに、玉川先輩はなぜか「数字を持っている」のです。不思議でなりませんでした。

 その頃玉川先輩に唐突にこんなことを言われたことがあります。

「なあ、鎮目くんも只野仁みたいに特命係長になりたいよなあ? 俺は特命係長になりたいんだよ」

 何を突然? とかなり驚いたので今も鮮明に記憶に残っています。でも考えてみれば、玉川先輩は本当に「特命係長」のような人なんだと思います。

 テレビ局員には人事異動がつきものです。僕もいくつもの番組を行ったり来たりしました。しかし、玉川先輩はなんだかずーっと「モーニング」にいます。番組内でも独特な存在で、いろいろな伝説を持っていて少し恐れられています。夕方の「スーパーJチャンネル」というニュース番組から異動して来たばかりの僕が最初に驚いたのは、玉川先輩が「テレビ朝日課長 玉川徹」というネームテロップでスタジオに出演していたことでした。

 正確な経緯はよく知りませんが、その頃ヒソヒソ話で誰かに聞いたのは、玉川さんが『リポーター 玉川徹』というテロップで出演したら、誰か番組の偉い人に怒られた、と。お前がなんでリポーターなんだ? お前は何者だ? とかなんとか言われたのでしょう。確かに玉川先輩は僕たちと同じ一般職採用で、アナウンサー採用などの「出役」ではありません。いってみればまあ本来は「裏方」なのです。

 で、玉川先輩はどうやら、「だったら僕は会社での役職は課長なのだから、何者かと言われれば課長です」的なことで、それ以来「テレビ朝日課長 玉川徹」というネームテロップを自分で発注して出演していたらしいのです(まあ、あくまでその当時そんな話を聞いたかな? という程度なので、真偽のほどは明らかではありませんが…)

 これには、別の番組から来たばかりの僕はかなり面食らいました。局の職級である「課長」などという肩書きでテレビに出演する人なんて、電波少年のT部長ぐらいしか聞いたことがありません。しかも伝説を信じれば、上司へのまあまあの喧嘩の売りっぷりです。すげえ番組だな、不思議な人がいるな、と正直若干ビビりました。

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