テラスハウスが残したもの…欲望に火をつけSNSのヘイトを取り込んだ先で

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平成のトレンディ番組

 2012年に始まった「テラスハウス」は、映画も含めれば直近の東京編まで7つのシリーズが展開されてきた。番組冒頭における「台本は一切ございません」という説明ゆえに、その真偽のほどを問う報道やセクハラ、パワハラの実態を報じるニュースもあった。それでも番組が継続してきたのは、その人気あってのことだろう。テラスハウスが残したものとは何だったのか。

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 番組が配信される月曜夜を待ちわびる人は少なくなかったことだろう。配信後には「今日のはあり得なかった」「まさに神回」「見ました?」「すぐに見てください」などといったメッセージが決まって交わされていた。木村花さんの突然の死によって、番組は休止。そんな“日常”も終焉を迎えた。

 あるメディア関係者が振り返る。
「2012年に番組が始まった当初は、アメリカの恋愛リアリティドラマ『ザ・ヒルズ』をベースにしていました。オープニングは言うまでもなく、カメラのアングルなんかはかなり参考にしていたと思います。番組を作るうえで一番のポイントは、どうやったら視聴者と繋がることができるかということ。今の時代はそこまでではないとはいえ、それが視聴率という絶対的な数字に表れる。テラスハウスももちろん例外ではなかった。マーケティングによってトレンドを分析し、時にそれに抗いつつ、様々な提案をするというスタイルで番組を作っていたと思います」

「トヨタが協賛につき、出演者にはクルマが与えられる。クルマが特に若者に売れないと言われている時代に、“クルマがある生活はクールだ”という打ち出しをしたわけですね。湘南・葉山&鎌倉編の舞台となった家の前は観光地と言うか聖地と化して、ガードマンが立っていたほど。私の知り合いも嬉しそうに出かけて行っていました。撮影が終わったら案の定と言うか、社会現象の常と言うか、AVの撮影に使われたりもしました」

「直近のシリーズと違うのは、あぁこういう生活っていいなぁと視聴者がすりこまれるような提案をしていた点。みんなの憧れの感情に火をつけるというか。トレンディドラマで一世を風靡したフジテレビがこれを作っていたというのは何の因果かとは思いました。テラスハウスは平成のトレンディドラマと言えると思います。ま、台本は一切ないからドラマと言うと語弊はありますけれどね」

 クルマを持つライフスタイルから遠く離れてきた若者は、海外旅行からも距離を置いてきた。そこを突いたのが、ハワイ編だった。

「ハワイは本当に画になるし、若者たちにとっても魅力的に映ったことは間違いないでしょう。ハワイ自体の人気はハワイ編スタート(2016年11月)以前から当然高かったわけですが、例えばちょうど同じ年にあの『すし匠』の中澤圭二さんがハワイに出店するなど、さらに盛り上がっていく感じはありましたね。コロナ禍がなければ日本発着便を増便予定だった航空会社もありましたから、その後の動きを見れば、ハワイ編を撮った番組の目の付け所は良かったと言えるでしょう。ま、ハワイで撮影できるくらいの予算をゲットできたというのが最大の理由ではありますけれどね(笑)」

 内容的にも転機が訪れたと指摘するのは、民放の関係者。
「ハワイ編では、大妻女子大学2年生の仁希とプロサーファーの魁とのかわいいキスシーンがSNSで評判になる一方で、ほのぼのとした雰囲気とは裏腹な女同士のケンカが展開されたりして、いわゆるエロとバイオレンスの要素が視聴者を刺激しました。SNSでの書き込みにもそれが反映されていて、作り手側は数字が取れるということをよく理解したんでしょう。視聴者と繋がることができたという高揚感もあったはず」

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