ブルーインパルスの“感謝飛行”で自衛隊不信を口にする人々の心理とは?

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飛行は空自が自発的に進めた

「医療関係者のためにブルーインパルスが東京上空を飛んだことで、国民の大多数は肯定的に受け止めていると思います。そんな中で批判的なことをおっしゃる方は、戦後の平和教育の影響でしょう」

 と語るのは、元航空自衛官で軍事ジャーナリストの潮匡人氏である。

「日教組が中心となって行った戦後の平和教育を受けて育った人は、だいたい50代から60代の中高年です。当時は、憲法9条がいかに素晴らしいかを説き、戦争は絶対反対、自衛隊は憲法違反であると教え込まれました。そのため、当時の自衛隊員は肩身が狭く、『税金泥棒』と言われたものです」

“平和教育”を押し付けたのは、日教組だけではないという。

「40年前に放送されたTBSのドラマ『3年B組金八先生』では、卒業したら自衛隊に入隊を希望する生徒に対して、金八先生が猛反対。説得して警察官にさせるという、美談として報じられました。実際、平和教育に洗脳された人たちの中には、そういう考えの人もいたでしょう。けれども、今こんなこと言ったら若い人は『このおっさん何言ってんだ』となりますよ」(同)

 1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災で、自衛隊に対する世間の目は、変わったという。

「災害時における自衛隊の救助活動が大きく注目されて、評価されるようになったのです。新型コロナでも、自衛隊は感染者を搬送しています。東京・池尻の自衛隊中央病院では、クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の乗客など122人の患者を受け入れ、ほとんど無事退院させています。院内感染者は1人も出していません」(同)

 1960年に創設されたブルーインパルスは、64年の東京五輪ではオリンピック史上初となる、五輪マークを描くというアクロバットを成功させた。東京上空を飛行したのは今度で3度目だ。

「ブルーインパルスは自衛隊の広報を行うのが重要な任務です。機体は基本的に戦闘機と同じ構造ですが、武器は載せていません。本来は練習機として使われるものです。今回の飛行について税金のムダという声もありますが、ジェット燃料はハイオクガソリンと同じくらいの価格です。20分程度の飛行では大した額にはなりません」(同)

 ブルーインパルスに先駆けて、アメリカは4月28日、医療関係者のために海軍の「ブルーエンジェルス」と空軍の「サンダーバーズ」がニューヨーク上空でアクロバット飛行を披露した。イタリアも、5月25日から空軍がアクロバット飛行を行っている。

 海外の動きに倣ったのか、河野太郎防衛相は航空幕僚監部に対し、医療従事者への敬意と感謝を示すためにブルーインパルスを飛行させることができないか検討するよう指示を出した。

「ブルーインパルスの飛行ルートは、飛行の直前まで公表されませんでした。ブルーインパルスをひと目見ようと人が集まると、クラスターが発生しかねませんからね」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年6月4日掲載

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