阪神・藤浪晋太郎は“アスリート”ではなく土と芝のにおいのする“野球選手”

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少し冷めてしまっているのではないか

 藤浪投手の入団当時から、その比較対象とされたのがロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手。彼のような品行方正な選手の人気が上がり、CMが入るのもわかります。しかし、野球界も私たちが暮らす世の中と同じで、真面目な人もいればなまくらな人もいるわけです。さらに言えば、人前に出ているからといって世の中の規範になる必要はなく、結果が出ていればそれでいいと思えてなりません(もちろん罪を犯すなんてのは言語道断ですし、論ずるにも値しませんが)。

「人前に出ている」という言葉のついでで申しますと、藤浪投手がいて大谷投手がいて、菅野智之投手やダルビッシュ有投手がいて……と、一部の投手の名前を上げただけでも、これだけ個性の違うそして個性の強い人たちがひしめいており、「野球界はキャラクターの宝庫でエンターテインメントだな」とも思えませんか?

 昭和生まれの、化石のような考え方かもしれませんが、サプリメントをしっかり摂って目的に沿ったトレーニングをしている人たちより、二日酔い解消のためにランニングをしたり投げ込みをしたりして勝っちゃうような人にロマンを感じてしまうというか、何というか。アスリートなどという呼称ではなく、運動選手や野球選手といった土や芝のにおいがする呼び名の人たちであって欲しいという願望があったりします。それを踏まえますと、顔やスタイルは別として、野球選手の呼び名がしっくりくるのが藤浪投手ではないかと感じるのです。

 あと、今回の件を含めここ数年、気になっていることがあります。藤浪投手自身が野球選手であること、そして阪神タイガースの一員であることに少し冷めてしまっているのではないかと。思うように成績が出せないジレンマもその要因だとは思いますが、それ以外にもなにか別の原因があるように思えてしまいます。もともとクールな方に見受けられますが、以前よりもさらに目の奥が暗くなってしまったというか……。

 もしこの予想が当たっているなら環境を変えてあげることも必要ではないでしょうか?
 トレードであったりメジャーを目指す機会を作ってあげたり、方法は幾つかあると思います。やはりプロ野球ファンとして、藤浪投手の豪速球や奪三振ショーを心底また見てみたい。尊敬なんてされる必要はありません、ただ「藤浪、やっぱり凄いな」と観衆を唸らせる投手として復活して欲しいですね。だって、高卒1年目からふた桁勝利を3年連続でするなんて、怪物以外のなにものでもないんだから。

徳光正行
1971年12月生まれ。茅ヶ崎市出身。日本大学芸術学部在学中よりミュージシャンを目指すが、父の病により断念。その後、司会業やタレント業に従事する。また執筆活動にも着手し、『伝説になった男~三沢光晴という人~』『怪談手帖シリーズ』、岩井志麻子氏との共著に『凶鳴怪談』がある。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月2日掲載

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