コロナ禍の時効停止を 死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める遺族の叫び

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「必ず探し出します。諦めません」

 もちろん、緊急事態宣言中の期間だけ時効を停止にするというのは、刑事訴訟法の改正等の手続きも必要であり、東日本大震災の時ですら検討されなかったことなどを踏まえれば、現実的には厳しいだろう。ただ、捜査にたずさわる警察官はもちろん、一般市民にも、代里子さんのように時効について切実な思いを抱いている遺族がいるということを、是非念頭においてほしい。そうすれば、些細な情報であっても、何か事件につながりうる情報と考え、積極的に通報する姿勢にもつながるのではないだろうか。

 代里子さんは夫を病気で亡くした後、母親想いの優しい息子と二人暮らしの中、突如、その息子・孝徳君の命を奪われた。その悲しみ、犯人への憤りはいかばかりか。その思いを心にとどめながら、死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める活動を個人で続け、これまでに賛同する署名をネットと手書きで6万件近く(5月中旬時点)集めた。

 幼くして将来を奪われたサッカー少年だった最愛の息子のために、懸命に前を向いて活動を続ける優しい母親は、犯人への思いをブログなどに掲載した手紙でこうつづる。

「事故が起きた時 孝徳は生きていましたか 痛がっていませんでしたか 泣いていませんでしたか 助けを求めていませんでしたか!! 事故の日、孝徳の状況を教えてください。お願いします」

 そして、最後にこう締めくくっている。「必ず探し出します。諦めません。真実を聞くまでは、犯人と私には終わりはない」――時効は誰のためにあるのか、社会は改めて見直す必要があるのではないだろうか。

※代里子さんは事件から10年以上が経過した今、犯人が全国のどこにいるか不明のため、「突然、明確な事情もないまま引っ越した人を知っている方」「運転した車を突然、廃車した人を知っている方」「何年も放置されている車両を知っている人」などについても広く情報提供を呼びかけている。情報提供は、代里子さんのブログ(https://ameblo.jp/kosekitakanori/)の専用ページを通じてか、埼玉県警熊谷警察署(048-526-0110)まで。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月17日掲載

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