大阪桐蔭、明徳義塾、智弁和歌山…過去10年で甲子園を“席捲”したチームはどこだ?

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 投手の球数制限が導入されるなど、2020年代に入り新たな時代へと突入した高校野球。これまでも多くの学校が歴史に名を刻んできたが、2010年代は果たしてどんな顔ぶれが甲子園を席巻したのか。改めて振り返ってみたい。まず春、夏の甲子園で過去10年間の勝利数を多い順に並べると、以下のような顔ぶれとなった。

大阪桐蔭(大阪):42勝(春21勝・夏21勝)
八戸学院光星(青森):23勝(春8勝・夏15勝)
履正社(大阪):21勝(春12勝・夏9勝)
仙台育英(宮城):19勝(春3勝・夏16勝)
作新学院(栃木):19勝(春2勝・夏17勝)
敦賀気比(福井):19勝(春12勝・夏7勝)
日大三(西東京):18勝(春8勝・夏10勝)
東海大相模(神奈川):18勝(春8勝・夏10勝)
聖光学院(福島):16勝(春4勝・夏12勝)
明徳義塾(高知):16勝(春3勝・夏14勝)

 1位はダントツの42勝をマークした大阪桐蔭となった。2012年、18年と二度の春夏連覇を達成し、誰もが認める2010年代の“王者”と言えるだろう。ちなみに、この10年間で17年度以外は全ての代でプロ野球選手が誕生しており、その数は17人にもなる。くわえて、17年度卒業の選手も徳山壮磨、岩本久重(ともに早稲田大)などが順調に成長しており、来年以降プロ入りする可能性は高い。甲子園で勝ちながら、選手を輩出し続けているという点では一時期のPL学園(大阪)と並ぶ存在と言えるだろう。

 大阪府内で大阪桐蔭としのぎを削る履正社は3位にランクインした。09年までは甲子園通算わずか1勝であり、この10年での躍進という意味ではナンバーワンと言えるだろう。14年と17年の選抜で準優勝し、昨年夏は念願の全国制覇を達成した。10年の山田哲人(ヤクルト)を皮切りにプロにも多くの選手を輩出しており、今後も大阪桐蔭の強力なライバルとなりそうだ。

 いまだ甲子園での優勝がない東北勢だが、八戸学院光星と仙台育英、聖光学院がトップ10に入った。八戸学院光星は11年夏から3季連続で甲子園準優勝を果たし、その後もコンスタントに勝利を挙げている。一方、仙台育英は17年夏に甲子園準優勝。現在のチームも下級生に好素材が揃っており、東北勢の悲願である“大旗の白河越え”の筆頭候補になりそうだ。聖光学院は戦後最長となる13年連続夏の甲子園出場を果たしており、現在も継続中。なかなかベスト8の壁を破れずにいるが、過去10年間で初戦敗退はわずか3回と安定した戦いぶりを見せている。

 強豪が多い関東では、作新学院がトップとなった。聖光学院に次ぐ9年連続夏の甲子園に出場中で、16年夏には今井達也(西武)を擁して54年ぶりとなる全国制覇も達成した。ノーアウト一塁から送りバントをしない攻撃的な野球が代名詞となっており、その流れは現在の高校野球に大きな影響を与えた。チームを率いる小針崇宏監督は今年で37歳とまだまだ若く、今後も全国の高校野球をリードしていく存在になりそうだ。日大三と東海大相模も、わずかに作新学院に及ばなかったが2000年代、2010年代と両年代で甲子園優勝を果たし、長きにわたって全国的な競合であり続けている。まさに関東を代表するチームと言えるだろう。

 15年の選抜で北陸のチームとして、初の甲子園優勝を果たした敦賀気比もトップ10入りを果たした。吉田正尚(オリックス)、西川龍馬(広島)などプロでも主力として活躍する選手も輩出しており、昨年夏に甲子園準優勝を果たした星稜とともに、今後も北信越の高校野球をリードしていく可能性が高い。

2010年代の甲子園出場回数

 続いて、2010年代の甲子園出場回数をみてみよう。トップ10は以下のような顔ぶれが並んだ。

明徳義塾(高知):14回(春5回・夏9回)
聖光学院(福島):13回(春3回・夏10回)
八戸学院光星(青森):12回(春6回・夏6回)
大阪桐蔭(大阪):12回(春7回・夏5回)
智弁和歌山(和歌山):12回(春5回・夏7回)
作新学院(栃木):11回(春2回・夏9回)
仙台育英(宮城):10回(春3回・夏7回)
花咲徳栄(埼玉):9回(春3回・夏6回)
横浜(神奈川):9回(春4回・夏5回)
敦賀気比(福井):9回(春5回・夏4回)
龍谷大平安(京都):9回(春5回・夏4回)
履正社(大阪):9回(春6回・夏3回)
智弁学園(奈良):9回(春5回・夏4回)
鳴門(徳島):9回(春1回・夏8回)

 聖光学院を抑えて、トップに立ったのは勝利数では10位の明徳義塾だ。15年夏から18年春までは6季連続で甲子園出場を果たしており、地方大会での勝負強さはさすがという他ない。2000年代から四国の高校野球をリードし続けていると言えるだろう。

 強さを維持しているという意味では、智弁和歌山もさすがの存在だ。勝利数では11位タイの14勝でわずかにトップ10入りを逃したが、出場回数では3位タイと上位にランクインした。長く指揮を執った高嶋仁監督が18年を最後に勇退したが、中谷仁監督になってからもスケールの大きいチームを作り上げているだけに、今後も甲子園での活躍に期待が持てそうだ。

 近年勢いを感じるのが花咲徳栄だ。強豪の多い埼玉で昨年まで5年連続で夏の甲子園出場しており、2017年には県勢として初となる夏の甲子園優勝も果たした。また5年連続でプロ野球選手を輩出している点も特筆すべき点と言えるだろう。

 1980年代は池田からPL学園、1990年代に入って帝京と智弁和歌山が台頭し、2000年代後半からは大阪桐蔭の優勢が続いている。2020年代は果たしてどのチームが時代を築くのか。新たな勢力の台頭にも期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月17日掲載

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