マスク空売り、ニセ教師…Withコロナ、Afterコロナの「中国犯罪実録」

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コロナ犯罪はSARS犯罪の10倍規模

 中国でもコロナによる経済的ダメージは甚大で、収入減に苦しむ人も多い。やむを得ず貸金業者に融資を依頼するケースもあるが、そこにも落とし穴がある。黒竜江省に住む男性は貸金業者のアプリをダウンロードし、融資を申し込んだところ、保証金の一種として2000元(約3万円)のデポジットが必要だと説明された。指示通りに2000元を預けたが、その後デポジットは記録から消失。男性は業者に対し、チャットで以下のようなやり取りをした。

「オレの金がなくなったぞ」

《お客様からお預かりした2000元はセンターで処理しておりますが、保証金不足のため、現在出金できません。3000元の保証金をお預け頂く必要があります。保証金が確認できれば、100%確実にお支払い致します》

 預けたはずの保証金が不足とは、意味がわからない。

「最後のなけなしの金だったんだぞ。詐欺じゃないのか?」

《いいえ。私たちはきちんとした正規の会社です》

「いいから金を返してくれ。もう信用できない」

 "貧すれば鈍す"とはまさにこのこと。3000元を要求された時点で男性は詐欺に気づき、業者の指示を無視したという。

 マスク不足に乗じた知能犯もいた。広東省に住む人物は、SNS上でマスクを1枚1.8元(約27円)で販売するとうたい、被害者からマスク5000枚分の代金9000元(約13万5000円)を騙し取った。代金を支払うと連絡が取れなくなったが、地元警察がその後に逮捕。裁判で懲役10カ月、罰金1万元の判決が下されている。

 他人の善意につけ込んだ募金詐欺も発生。詐欺被害者は、オンラインゲームで知り合った相手からこんなメッセージを受け取った。

「武漢に住んでいるんですが、咳ひどくて吐血し、隔離されています。緊急手術が必要なんです」

 詐欺師は1万4488元(約21万8500円)を騙し取ったが、ギャンブルや旅行などに使ってしまったという。かなりの大金だが、ゲームで意気投合してうまいこと信頼関係を築いたのだろう。裁判では懲役1年2カ月、罰金8000元(約12万円)が課せられ、騙し取った金は被害者に返すよう命じられた。

 中国最高人民検察院(検察庁に相当)の発表によると、2003年のSARS流行期に発生した犯罪は268件、逮捕者567人だったのに対し、今年のコロナ流行期はすでに3324件、同4120人にものぼる。罪名は詐欺、公務執行妨害、暴行や傷害、偽造品の製造や販売などが多い。Withコロナ、Afterコロナのフェーズに差し掛かった中国は、差し詰め犯罪天国の様相を呈しているようだ。

西谷格
1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞「新潟日報」の記者を経て、フリーランスとして活動。2009~15年まで上海に滞在。著書に『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月11日掲載

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