3月に宝塚を退団した早花まこが「この時期に退団できたことは財産」と語る理由――「あの人の#おうち時間」(10)

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 新型コロナによる「おこもり」は不自由だけれども、自由な時間は山ほどある!ということで、人生に突如として現れた「おうち時間」の過ごし方を紹介してもらうこの企画。第10回は元宝塚歌劇団娘役で今年3月に退団されたばかりの早花まこさん。さて、いかがお過ごしですか?

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 今年の3月22日に、18年在籍した宝塚歌劇団を退団しました。歌劇団では2月末からいくつかの公演が中止になり、私自身の退団公演も例外ではありませんでした。そんな中、東京公演の千秋楽だけは上演できることになって…。公演を無事に終えられたことには感謝しかありません。自分がどれだけ多くの人に支えられているか、どれだけ人が優しさを持っているかということがよくわかりました。この時期に退団できたことは、私にとって大きな財産になりました。

 それから1カ月ほどが過ぎ、今は引越し前の片付けに追われています(笑)。お稽古用のスカートや着物、アクセサリーは後輩たちがもらってくれたので大分減りましたが、台本などの紙ものがなかなか処分できなくて。写真をプリントアウトして手に持って眺めるのが好きなので、そういうものが出てくるといちいち手を止めて見てしまったり。

 本もたくさんあります。片付けの途中つい読み返してしまったのは、小さいころから大好きな絵本『ふたりはともだち』。がまくんとかえるくんの可愛らしいやりとりも、このような状況で読むと新鮮に思えます。人と人が出会って話をする、ただ単純なそのことがとても輝いて見えるのです。

 先日、オンラインで詩の朗読会に参加しました。歌劇団の演技指導をしてくださっている登坂倫子先生の主催で、数人で決まった時間に集まって。私は新潮文庫の『萩原朔太郎詩集』や尾崎豊さんの『白紙の散乱』から数編を選びました。

 劇団でのお稽古のような演技指導ではなく、ただ詩を読み、感想を言い合うだけです。でも、人が声を出して詩を読むこと、そのことにとても大きなパワーを感じました。舞台に立つ人間としては、生(なま)の表現をとても大切にしていましたし、それが全てだと思っていたところもあります。でもたとえオンラインでも、できることがたくさんあると思いましたし、おうち時間が増える中で、何かを想像すること、イメージすることが少なくなっていたことにも気づかされました。

 家の中で身体を動かすことの大切さはよく語られますが、同じように「心を動かす」こともすごく大事だと感じます。語り合ううちに、2時間ほどがあっという間に過ぎていきました。

 退団後の最初のお仕事は、コラムの執筆です。5月に出る「小説新潮」に掲載されます。まさか小説誌に自分の文章が載るなんて、22日の発売日が楽しみで仕方ないです!

 これまでも8年間にわたって劇団の機関紙に文章を寄せていましたが、あたたかい読者に守られた場所を離れ、「どういうものを書いたら楽しんでもらえるのか」と考えながら書くのもとても楽しかった。在団中はインターネットとは程遠い生活でしたが、新たにnoteも始めました。

 私なりのペースで、いろんな形で書くことを続けていきたいです。これからも、どうぞよろしくお願いします。

早花まこ(さはな・まこ)
元宝塚歌劇団娘役。2002年入団。劇団の機関誌「歌劇」のコーナー執筆を8年にわたって務め、鋭くも愛のある観察眼と豊かな文章表現でファンの人気を集めた。2020年3月に退団。

デイリー新潮編集部

2020年5月9日掲載

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