【コロナ禍】緊急事態宣言解除ならず 小池知事の扇動で“命の経済”をいつまで止めるのか

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 黄金週間が待ち遠しいのが例年で、それが終わるのを心待ちにするのは、今年が初めてではないだろうか。それなのに、連休最終日の5月6日、ため息しか出ないとしたら――。

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 トンネルのなかは暗い。しかし、それは山の向こう側へ最短距離で到達するための道であり、だから、暗くても耐え忍ぶことができる。いま、緊急事態宣言というトンネル内で辛抱できるのも、5月6日という出口が見えていたからである。

 耐えた甲斐があり、東京都内の感染状況は、小池百合子知事が懸念した爆発に至っていない。1日当たりの新たな感染者数も、4月26日には72人と、13日ぶりに2桁に戻った。

 ところが、総理官邸周辺からは、「緊急事態宣言は当面、解除されない」という声ばかり聞こえる。もっとも、それは必ずしも安倍総理の思惑ではないという。

「総理はここ数日の都内の数字について、“落ち着いている。宣言の効果が出てきた”と話しています」

 と話す政治部記者は、振り返って、こうも言う。

「緊急事態宣言が7都府県に出されたのは4月7日でしたが、当初、安倍総理は宣言を出すことに積極的ではなかった。ところが、3月下旬の3連休前に手を打たず、感染を広げてしまった小池知事が、7月の知事選に向けて挽回しようと官邸に日参。宣言を出すよう執拗に求め、官邸側が折れたのです」

 勢いづいた小池知事は先走って、総理が宣言を発令する前日にフライングで会見し、理美容店や百貨店にも休業要請すると言ってしまった。それを受けて百貨店などは、本来は必要なかった休業の準備をしてしまったため、いまも開けられないままである。そんな経緯もあるものだから、

「総理は本音では予定通り宣言を解除したいのですが、専門家会議の面々は“まだ相当がんばる必要がある”と言っています。当初は連休が終わるギリギリまで状況を見るはずでしたが……」(同)

 5月6日という出口がふさがれたとき、遠くに明かりも見えないトンネルのなかで、われわれは命をつなぐことができるだろうか。循環器、心療内科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏が言う。

「自営業の人などは本当に大変で、私のところに来る患者さんも仕事への影響から、眠れなかったり、精神的に不安定になったり、精神不安から健康状態が悪化したりしています。太ったという声も多い。ストレス性の病気や生活習慣病も増えるでしょう」

 それだけではない。

「コロナで仕事を失った人たちが本格的に困窮するのは、失業保険の受給期間をすぎたあたりからでしょう。失業率が1%上がると、10万人当たり約25人、自殺者が増えるというデータがある通り、経済が悪化すれば命も失われます」

 実は、今年2~3月だけでも、日本で3138人が自殺しているのをご存じか。4月の数を加えれば、新型コロナウイルスに感染して死亡した348人(4月26日現在)の10倍を超えるだろう。このうち、経済問題が理由の自殺だけでも464人と、コロナによる死者を超えるが、その増え方が急加速しかねない。精神科医の和田秀樹氏も、

「経済問題が原因の自殺者は、ピーク時に年間9千人いたのが、いま4千人に減っている。しかし、こうして不景気や陰鬱な雰囲気が続くと元に戻りかねず、そうなれば5千人も増えてしまいます」

 と憂慮するのである。

 そもそも、経済の息の根を止め、その煽りで多くの命を奪いうる決定を、感染症の専門家だけにゆだねていいのか。感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫氏が言う。

「専門家会議の意見だけを聞いていてはいけないと思います。私も感染症以外に病院経営のことも考えますが、政府も同様に、もっと経済に配慮してほしい。新型コロナは封じ込めの時期をすぎ、蔓延してきているのですから、経済のことも考え、専門家の声を100%聞くのではなく、参考レベルを少しずつ下げていくしかないと思います」

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