似鳥昭雄(ニトリホールディングス会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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100倍発想の源

佐藤 それで実際に30年後はどうなったのですか。

似鳥 2003年に店舗100店、年間売上が1千億円を超えました。そして2020年2月期には607店、6420億円超を見込んでいます。いまは2032年、つまりアメリカに行ってから60年に向け、3千店、3兆円を目指しているところです。

佐藤 言葉通りになった。似鳥さんには「100倍発想」という言葉がありますが、それを実現されている。

似鳥 1店を3店にして、その次は10店、ということでは、会社は変わらないし、急成長のモデルにもなりません。でも100店となれば、お金はどうするのか、人はどう集めるのか、その教育はどうするのかなど、すべてを計画していかなくてはならない。そうすると過去のやり方ではできません。その目標に合った新しいやり方が必要になってくる。

佐藤 過去の延長ではなく、将来の目標から考えていくわけですね。

似鳥 常に未来から逆算、逆算、逆算です。

佐藤 似鳥さんは経済予測もされて、それは「週刊現代」の恒例企画でもありますが、もともと未来から考える習慣があるわけですね。

似鳥 そうですね。実は、私は何にも集中することができず、人の話もじっと聞くことができません。対人恐怖症もあり、接客でも、どもったり、汗が出てきたりして、うまくいかなかった。だから営業職で会社勤めをしていたとき、一件も契約できずクビになりました。そんな日々を送ってきましたから、目の前のことではなくて、常に遠くを、未来を見ようという習慣がついたんです。

佐藤 なるほど。最近、兼本浩祐さんという医師が書いた『発達障害の内側から見た世界』を読んだのですが、とても興味深い内容でした。人間の適性について、例えば、耕運機とスーパーカーを考えてみるわけです。耕運機で高速道路を走ったら、周りに迷惑だし、危険です。一方、スーパーカーが畑を走っても、耕すことはできない。要するに人それぞれ適した場所が違うという話で、自分の適性に合う場所にいればよいということが書いてありました。

似鳥 なるほど。私はきちんと話が聞けないし、試験でも固まってしまいます。だから日経新聞の「私の履歴書」で書いたように、高校も全部落ちて、コメ1俵を渡して裏口から入学した。これは本当のことです。勉強はできませんでしたが、好奇心は旺盛でしたね。誰にでも長所・短所はあるものだから、自分の適性を見つける努力をするのがよいですね。

佐藤 そうです。私だって、いろんなことに関心を持つという点では多動の要素がかなりありますから。

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