日本株のBCG接種に「コロナ死」抑制力の根拠

国内 社会 週刊新潮 2020年4月23日号掲載

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 巷の噂、と切り捨てる前に詳細な検証が必要だろう。新型コロナウイルスにBCGワクチン接種は有効か、否か。中でも日本で培養された日本株が「コロナ死」を抑制するのではと、注目が集まっている。

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 結核予防として各国で接種されてきたBCGといえば、日本では0歳児へのハンコ注射として知られる。一見、無関係に見えるコロナに効くという「仮説」を理解するにはまずその歴史を繙(ひもと)かねばならない。

 BCGを開発したのはフランスにあるパスツール研究所の研究者だった。1921年、BCGを初めて人に投与。対象は乳児で、その母と祖母が肺結核症を患っていたという。今で言う濃厚接触者だったわけだ。

 母乳に混ぜて投与し、効果が認められると、この研究所から各国にBCGは配布され、それぞれの国でワクチンが培養されるようになる。結果、日本株、ソ連株、デンマーク株などに分かれ、現在に至っている。

「BCGワクチンを接種している国とそうでない国では統計的に死亡率が異なっています。特に、日本株とソ連株の効果が強く、デンマーク株では効果が薄いように見えます」

 と解説するのは、大阪大学の宮坂昌之名誉教授。BCGワクチンの効果について、実証はこれからとしながらも、

「免疫学の世界ではこのワクチンが高齢者の細菌性肺炎に予防的効果があると指摘されていました。というのも、結核菌の細胞壁にある成分が、感染を予防するための自然免疫を刺激し、その免疫力を高めるのかもしれません。最近の研究結果から、この自然免疫が高まると、ウイルスが体に入った時に対抗するための獲得免疫の機能も高まることがわかっています。死亡率がBCGワクチン接種国で低いのは、もしかすると、BCGが自然免疫や獲得免疫を刺激して、重症化を防いでいるとも考えられるのです」

 例えば、日本株を使用している日本や台湾、タイで100万人あたりの死亡者数を見ると、日本は現在、1人程度。他の2カ国はそれより低い水準だ。対して、デンマーク株で接種しているポルトガルは約47人。接種を行っていないイタリアやスペインに至っては300人を超えているのだ。ちなみに欧州の寒冷地でウイルスが猛威を振るう中、ソ連株を使うロシアは日本と同水準の死亡率の低さである。

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