コロナ禍の「抗体検査とBCG論争」から見る 日本人の免疫へのあこがれ

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ワクチン開発を難しくする要因

大場:2.の血清抗体の場合、新型コロナウイルス発生状況から2 週間以上経過し、上気道からのウイルス量が低下し、PCR検査で証明することが難しくなっている人に対する「補助的」検査と位置付けられていますね。どのような注意が必要なのでしょうか。

増富:現時点でのWHOの公式見解は、「新型コロナウイルスに対して感染したヒトが生体内で抗体を産生しているのかどうかはわからない」というものです。つまり、2番目の方法はそもそも、「コロナウイルスに対する抗体を産生している」前提ですので、新型コロナウイルスに対する人の免疫反応に関する、今後の基礎研究の結果を見守る必要があります。

大場:抗体が「陽性か陰性か」がどのような意味をもつのか、感染から回復した人たち皆が本当に免疫を獲得できているのか、2度目の感染は本当にないのか、まだ不明な点が多いということですね。製品によって精度がまだ確立されていない状況下で、すでに抗体検査を使って、地域・国民ベースの感染状況を把握する取り組みが各国で取られているようですが、重要なのは数の議論ではなくて集団免疫がどこまで形成されているかです。

 今回の新型コロナウイルスの感染によって抗体が獲得されにくい可能性もあるとなると、ワクチン開発を難しくする要因にもなりかねないですね。

増富:抗体ができない、あるいは、できにくいとなると、検査方法の開発戦略も、ワクチン開発の戦略も根本から変わってきますよね。ともあれ、新型コロナウイルスに関しては「こんなこともまだ解明できていないの」と思うレベルのところから研究しないといけないんだということがわかります。いずれにしても、「PCR」検査に代わる迅速かつ簡便な検査法を世界中が待ち望んでいると思います。

 少し話は変わりますが、過去に接種したワクチンと新型コロナウイルスの重症化リスクの関連で、最近、BCG接種率と新型コロナウイルス致死率減少の間に関係性があると言われているようですね。もし本当ならば、なぜ、BCG接種を受けた人たちが重症化しにくいのか、その「メカニズム」には興味があります。

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