コメンテーターのホントのところ(中川淳一郎)

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 この連載の記念すべき第1回は、テレビに登場するコメンテーターの悪口でした。そんな私が4月からAbemaTVの夜の報道番組「Abema Prime」のコメンテーターになってしまいました。様々な裏事情があり、やらせてもらうことになったのですが、コメンテーターに否定的な視点はあの頃と変わっておりません。今も、不要な存在だと思っています。それでもやる以上は、視聴者に「観て良かった」と思っていただけるような発言を心がけるつもり。

 今はコロナ一色ですが、それ以外の、例えば「子供が行方不明になった」といったニュースの場合、「同じ世代の子を持つ親として心が痛みます」なんて前置きをして「心配ですね~」と視聴者視点で語るのがコメンテーターの常道だと言われています。でもSNS全盛の今、ツイッターのハッシュタグを辿れば視聴者の感想なんていくらでも拾えるわけですよ。

 にもかかわらず、けっこうなお金をもらえるわけです。私の場合は、ウェブメディアをひたすら編集し続けて、ネット上のトラブルやら空気感、炎上騒動等の紹介や分析ばかりしていますから、それについては多少詳しい。3月には「ネット情報から特定する“鬼女”の正体!」みたいな特集で、専門家として、いくつかのテレビ番組に出演しました。

 ところが、今私に求められているのは、コロナに対するコメンテーターとしての意見です。

 正直、これは門外漢なので、迂闊なことは言えません。

 奇しくも私のAbema初出演日の午前中、ツイッターのトレンドワードの上位に「高木美保」が入っていました。コメンテーターの名前がトレンド入りするのは、大抵何らかの問題発言があった時です。

 ツイートを追っててみると、どうやら「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)に出演した高木さんが、感染症の専門家・岡田晴恵さんの話を遮り、医療関連情報について感情的に喋り続け、それが不快だ、ということのようです。

 高木さんに対する書き込みは「素人は黙ってろ!」的な意見が多数を占めていました。これを知っていたからこそ、私はこの日、コロナ関連の話題でネット中継が繋がっている専門家にこう言いました。

「この場に来ていてナンですが、有事の際、我々のような素人コメンテーターはまったく役に立たないことが分かりました。せめてできることは、人々が知りたいであろう質問を専門家に聞くことだけです」

 今後もこのスタンスでやっていくつもりです。番組MCはお笑いコンビ・EXIT。今グングンと伸びている2人ですが、ニュースという新たなジャンルに挑戦する彼らを少しでも後押しできれば、と考えています。

 話は高木美保さんに戻りますが、あの日の叩かれ方は度が過ぎていた。高木さんって謎の知り合いが多い方で、何らかの話題について、「私の知り合いでこれに関係している人がいる」とけっこうな割合で言います。色々な方面にアンテナを張り、それでいて当事者の意見も聞くので、コメンテーターの中では相当優秀な部類だと思いますよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2020年4月23日号掲載

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