新型コロナで急増中 体験者が語る“ZOOM飲み会”に向く人、向かない人

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ZOOM飲み会コツ(1) 飲み会の終了時間を最初から決めておく

 ZOOMは以前「無料で使用すると40分しか話せない」と言われていたが、最近バージョンアップして無料版でも時間制限がなくなった。そんな状況もあり、みんな家にいながら飲んでいるので離脱タイミングの判断が難しく、ダラダラとしてしまうことがままあった。「俺もう離脱するわ」とズバッと言える人はいいけれど、その場の同調圧力に弱い人はなかなかその宣言ができない。

ZOOM飲み会コツ(2) 誰かが話し始めたら、他の人は大人しくする

 これはZOOMに限ったことではないが、ビデオ会議ソフトでは構造上、参加者が何人いようが一人ずつしか話せない。誰か一人が話すと、他者は沈黙して聞くという構造を強制される。普通の飲み会でそんなことはあり得ない。誰かが話しているところに強引に割って入ってくる人間もいるし、それを制する人間もいる。わざとそういう人を黙殺して、別の話題をそこに強引に持ってきて場の流れを変えようとする人も現れる。そういうドタバタも全て含めて飲み会とされているが、オンライン飲み会ではそういうことは起こらない。

ZOOM飲み会コツ(3) 集団の中で自分の演じる役割をしっかり把握し、それを演じ切る

 オンライン飲みの特徴の一つに、“自分の顔が常に視界に入りつつ、人と酒を飲んで話すこと”がある。「何を当たり前のことを言ってるんだ!」と言うかもしれないが、目の前に鏡を置いて酒を飲むナルシストはさておき、そんなシチュエーションは普通あり得ない。少し冷静に考えてみると、これがどれだけ異常なことかがじわっとわかると思う。オンライン飲み会では、自分の顔を見ながら人と話すことがノーマルだ。

 常に他者の顔を見ているのと同時に、自分自身の顔が視界に入る。このことでその集団の中での自分の立ち位置に関して、参加者それぞれが常に敏感になる。

 その立ち位置(キャラクター)を意識した「発言」「間合い」「表情」などを自然とコントロールできている人が「ZOOM飲み」の上手な人ということになるのだと思う。

 ……と、ここまでこういうことを書いておいて何なのだが、私自身はZOOM飲みをそれなりにムキになって何度か重ねた結果、実は「さらばオンライン飲み会一派」となった。

 オンライン飲み会は実際に酒を飲んでいるからわかりにくいのだが、本質的には上記(3)でも触れた通り「飲み会ロープレ」であり、もっと言えば「飲み会ごっこ」である。

 ここでやり取りされる情報は「言葉+抑揚(音)+表情」に限定されている。
そこには、逐一変化し続け生成される個人と集団とが織り成す場の“気の交換”のようなものが圧倒的に欠けている。

 コロナでみんな疲れている。こういうものに頼りたい気持ちもわかる。

 フジテレビの「めざましテレビ」でも『オンライン飲み会が流行ってる!』などとやっていた。「STAY HOME! にもこんな楽しみ方があるよ」という文脈で紹介されることが多く、「めざましテレビ」に限らずオンライン飲み会に対するメディアの論調は概ね好意的なものだ。

 けれど、だ。

 こんなことして酒飲むくらいなら、一人で本でも読みながら酒を飲む方が有意義な時間だと思う。本を読むことに疲れて少し寂しくなったら、友人に電話して愚痴を聞いてもらう。

「せっかく……」などと言うと不謹慎だが、せっかくこのコロナ禍からもらった豊かな一人の時間なのだ。

 オンライン飲み会が増えていけば、当然ネット上でのトラフィック数は向上する。

「そんなことまでしてIT業界に貢献する必要なんか、まるでない」と、私は思う。

尾崎尚之(@YuuyakeBangohan)/編集者

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月19日掲載

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