PCR検査の中身を知っていますか? 韓国の推奨政策と「数だけ議論」のワナ

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これほどまでに難しい技術があるのかと…

 1サイクルで遺伝子が2倍になる。だいたいの科学的な研究領域においては20-25サイクルを繰り返すことで遺伝子を2の20乗倍から2の25乗倍にまで増やして検出します。しかしながらこのサイクル数が30回を超えてくる頃から、だんだんと増幅させたい目的の遺伝子以外のゴミの部分も増え始めて(非特異的な反応と言います)、科学的な観点でデータの正確性に疑問が持たれるようになります。

 35サイクル以上になると、場合によってはそのサイクル数が多すぎるという理由だけで科学的な信憑性を否定する科学者もいるほどです。今回の新型コロナウイルスの「PCR」検査に関して言えばこうした非特異的な反応が絶対に起こっていないということも確認をしたうえで検査方法を確立したわけですが、なんとそのサイクル数は40回(少し異なる方法では45回)と驚くべき回数なんです。すなわち、2の40乗倍以上に増やさなければ検出できないのです。「不安定なRNA」を無事に取り出せたとしても第二関門として40サイクルも繰り返さなければならないほど微量なRNAしかないということがあります。

 こうなると、「誰がやっても同じ結果が得られます」というほど安定した検査とは言い難いわけです。トレーニングを受けた人しか正確には検査を行えないと言っても過言ではないと思いますし、実際の現在の臨床現場でこれほどまでに難しい技術があるのかと思うほど難しいのではないでしょうか。専門的に言えば「陰性だったときに本当に陰性と言えるのか」という偽陰性の問題が必然的に出てくるのです。

 テレビメディアでは、やたら「PCR」検査の“数議論”が報じられていますがこの辺りの背景を本当にどれだけの人が理解しているのかはわかりません。本当は専門家が、「なぜ一朝一夕に検査数を増やすことができないのか」を解説する必要があったのですが、今となってはもう「PCR」検査の数議論自体が増幅しすぎ、非特異的反応が起こりすぎ、という状況でしょうか。

 プロ野球のホームラン数について言えば、プロのピッチャーの球を誰もがホームランできないことが解っているからこそ「数だけ議論」に意味があるわけです。当初、国立感染症研究所が検査技術について広く公開したのにはこうした背景があるわけですが、最近はもう少し簡易的な方法の開発も急がれているようですので局面の打開を期待はできるかもしれません。

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