PCR検査の中身を知っていますか? 韓国の推奨政策と「数だけ議論」のワナ

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「PCR」検査の実施是非について、「何だかその中身がよくわからない」という意見は少なくない。東京オンコロジーセンター代表の大場大氏、国立がん研究センター研究所がん幹細胞研究分野分野長の増富健吉氏は共にがんを専門とする。客観的な視点だからこそ、目からうろこの専門外領域対談――。

「PCR」と呼ぶのは間違い

大場:僕も博士課程でPCR検査をやったことがあります。手順が大変で、慣れるまで四苦八苦していた記憶が。そこで増富先生、具体的に説明していただけませんでしょうか。

増富:大前提として、2点指摘をしておきます。
・今回の新型コロナウイルスは1本鎖のRNAウイルスであること
・「PCR」という言葉だけが一人歩きしすぎていること

 順番に説明していくと、新型コロナウイルスが「1本鎖のRNAウイルス」であるということは、このウイルス自体が「物質」として極めて不安定であることを意味します。患者さんから検体を採取してもその取り扱いの仕方次第では、「PCR」検査に持ち込むまでにウイルス自体が分解されてなくなる可能性もあります。

 次に「PCR」の中身に関してです。そもそもPCRという言葉は「2本鎖のDNA」を検出する技術のことで、正確にはコロナウイルスなどの「1本鎖のRNA」を検出する技術は「RT-PCR」といいます。新型コロナウイルスの拡大が報じ始められた初期には、この辺りをちゃんと正確に伝えようと努力していたメディアもいくつかありましたが、今となってはこの正確さを意識しようとする人すらいなくなりました。

 今回は100歩譲って、コロナウイルス検出の検査のためには、「PCR」検査は正しくは「RT-PCR」検査であることをあえて前置きした上で、「PCR」検査ということにします(本当は間違いです)。

 では前述の不安定な物質としてのRNAをうまくウイルスから分離することができたとしても、今回の「PCR」検査の中身がまた一筋縄ではいかないほど難しい。PCRはその基本原理として、特殊な試薬を加えたうえで温度を上げたり下げたりする「サイクル」を1サイクルとして、このサイクルを何度も繰り返します。

次ページ:これほどまでに難しい技術があるのかと…

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