コロナ対策で「小池知事」の魂胆 ロックダウン強行であなたの仕事はどうなる

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「緊急事態宣言」という言葉が飛び交い始めてから、テレビ画面で“彼女”の顔を見ない日はなくなった。一時のフィーバーは鳴りを潜め、五輪延期を巡る騒動では蚊帳の外。このところ存在感を示せなかった“都庁の女帝”は、ここぞとばかりに「ロックダウン」に踏み切るのか。その時、あなたの生活はどうなる――。

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 緊急事態宣言の発令が決定的となった4月6日の晩に、マスク姿で会見に臨んだ小池百合子都知事は、

「感染が抑えられるかどうかが一番重要。緊急事態の措置について、ぜひとも目的、内容を理解してほしい。都民が一丸となって乗り越えていきたい」

 と呼びかけた。が、都内の感染者が3桁にのぼったのは、小池都知事が五輪を気にしてなんら指示を出さず、都民の気が緩んだ2週間前の3連休に感染したと思しき人の数。自分の怠慢を棚上げし、7月の知事選に向けたパフォーマンスに勤しむ姿勢は、いかにもこの女史らしいが、それはともかく、官邸周辺では、“そもそも、彼女こそが緊急事態宣言の元凶”との声が大勢を占める。

 政治部デスクによれば、

「菅官房長官は、3月下旬の段階でも“感染者が3ケタになっても緊急事態宣言は出さない。そんなことをしたら経済が一発で止まってしまうだろ”と周囲に漏らしていました。菅さんだけでなく杉田和博官房副長官をはじめ政権幹部は今回の宣言に消極的でした。しかし、小池さんが再三、官邸を訪ねるようになってから風向きが変わった。そして、先の一斉休校を主導し、官邸のコロナ対策を一手に担うようになった今井尚哉首相補佐官が小池さんに説得され、“勝負あった”というワケです」

 とはいえ、彼女の魂胆はミエミエである。

「リーダーシップを発揮したかのように演出して支持率をアップさせ、夏の都知事選に勝利する。それが彼女にとって最大の目的です。都民はコロナ問題でナーバスになっているので、締めつけを強めれば強めるほど支持が集まる。いまは東京のロックダウンはしないと言っていますが、状況を見て、いつ“首都ロックダウン”を口にしてもおかしくない状況です」(同)

 その点には都政担当記者も首肯する。

「都内には、首都圏の各県から1日約280万人が通勤・通学しています。いまのところ、小池知事も通勤の自粛までは要請していませんが、都内の感染者が3ケタを超え続ければ話は別です。小池知事は何より世論の吹かせる“風”に敏感で、7月には都知事選を控える身。自身の人気取りのためならば、他県から都内に通勤する人々を含めた“往来の自粛”要請に踏み込むかもしれない。緊急事態宣言を受けて都が講じる措置には罰則こそありませんが、小池知事が“首都封鎖”、つまりは事実上の“ロックダウン”を指示する可能性は否定できません。そうなれば、3月の3連休にいち早く兵庫との往来自粛を呼びかけた、吉村洋文大阪府知事が追随する可能性もある」

“伝家の宝刀”を得れば、抜きたくなるのが人情だ。

 東京が“鎖国”状態に置かれれば、経済的な損失も甚大だ。

 ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏によると、

「ロックダウンといっても、イタリアやアメリカのように罰則を伴うほどの厳しい効力はありません。ただ、緊急事態宣言以上に経済活動がかなり制約されるのは間違いない。2016年度の東京のGDPは約105兆円で、日本全体の19%を占めます。仮に、自粛による休業で都内の経済活動のうち3割が止まると、1カ月で2・6兆円が失われてしまう。同じく緊急事態宣言が出された神奈川・埼玉・千葉の3県に東京を加えれば1カ月で4・6兆円のマイナスとなります」

 加えて、東京には1部上場企業の5割強が“本社”を置いているそうで、

「各企業の意思決定や、事業所間の調整などは本社が司っている。東京一極集中の弊害でもありますが、本社機能が停滞すれば、日本経済全体への悪影響はさらに拡大するでしょう」(同)

 実際に“首都ロックダウン”が強行されると、われわれの生活に多大な影響が及ぶことも避けられない。

 すでにオフィスを閉鎖してテレワークに切り替えている企業も少なくないが、一方で、いかにコロナが猛威を振るおうと現場を離れられない仕事もある。

 その最たる例を示すヒントが、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に定められた、「特定接種」の登録事業者だ。これは、2009年の新型インフルエンザ大流行を受け、今後のパンデミック発生を念頭に策定されたもので、登録事業者で働く人々は優先的に数に限りのあるワクチンの予防接種を受けることができる。

 なかでも、病院や介護事業、助産所といった命を預かる仕事は、やはり優先順位が高い。続けて、鉄道、電気、銀行、航空管理、水運、通信、上下水道、郵便など〈国民生活の安定に寄与する事業者〉が並んでいる。ちなみに、NHKや〈民間放送〉、〈新聞〉は含まれるが、〈出版社〉や〈週刊誌〉は選外のようである。

 他にも、食品やトイレットペーパーなどを扱うスーパーにドラッグストア、火葬場なども登録されている。だが、逆に言えば、こうした職種は疫禍による非常時でも休めず、〈活動を継続する〉ことが求められるのである。

 これ以外の企業の活動や通勤には強烈な自粛要請や指示の圧力がかかり、働きたくても働けない人が出てくる恐れもある。

 他方、渋谷区在住の男性会社員はこう語る。

「区の教育委員会から、緊急事態宣言の期間中、区内の学童保育を閉じるというメールがありました。気になったのは、両親が警察や消防、自衛隊、病院に勤めている家庭だけは例外的に子どもを預かるという記述です。これ以上、コロナの感染が拡大すれば、そうした職業の人たちが深夜や早朝に緊急招集されることもあるのだと感じました」

 トランプ大統領など欧米の指導者はコロナとの闘いを戦争に喩えたが、日本も“戦時下”の様相を呈しつつある。

 このまま事実上の“ロックダウン”が現実のものとなり、小池知事が徹底した外出自粛を要請すれば、

「生活必需品を扱う業界以外は、軒並み影響が避けられないと思います。景気ウォッチャー調査でも、特に旅客交通、飲食、百貨店の落ち込みは深刻。さらに、商店街や衣料品、レジャー施設も厳しさを増します」

 とは、第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏である。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏も同じ見解で、

「緊急事態宣言が出された以上、たとえ法的な強制力がなくても都知事の言葉の重みは増します。そのため、消費者から“こんな状況なのにまだ営業しているのか”と批判されることを恐れて、企業は自粛へと傾いてしまう。ホテルも大変なようでキャンセルの電話が鳴りっぱなしだとか。しかも、キャンセル料を請求しようものなら、“せきが止まらないんですが、行ってもいいんですか?”と言われるみたいです。コロナに乗じたカスタマーハラスメントも後を絶ちませんよ」

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、今後、国民が耐え難きを耐える生活を強いられると危惧する。

「すでに派遣切りや新入社員の内定取り消しも起きています。リーマンショックの直後には冬のボーナスをカットしたり、半減させる企業が相次ぎました。今回のコロナショックでも同様に夏のボーナスが減額されかねません。また、昨年は好業績でも人員を削減する黒字リストラが流行りましたが、今後は赤字企業による不況型リストラが増える。会社が倒産しかねない状態なので早期退職金の積み増しも望めません」

 女帝栄えて、民滅ぶ。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

特集「『緊急事態宣言』を生きる」より

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