93歳で亡くなった宮城まり子さん、本人が語った「ねむの木学園」3億円詐欺事件

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 3月21日、歌手で、「ねむの木学園」の園長の宮城まり子さんが、悪性リンパ腫のため東京都内の病院で亡くなった。享年93。1955年、靴磨きをして生きる戦災孤児を歌った「ガード下の靴みがき」が大ヒット。68年に私財を投じて肢体の不自由な子どもたちの養護施設「ねむの木学園」を開設したことで知られる。絵画や音楽を通じて障害のある生徒の能力を引き出す教育方法は、国内外で高い評価を受けた。ところが2011年、学園や彼女の口座から、元職員や音楽家が約3億円を騙し取る事件が発生。「週刊新潮」(2012年11月8日号)は、宮城さんにこの事件についてインタビューしている。以下は、その全文である。

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「3億円がね、8万4千円になっちゃったのよ」

 言葉の重みとは裏腹に、自嘲気味ながらも気丈に笑う宮城さん。彼女が、学園の女性職員や施設に出入りしていた音楽家の男に預金を詐取されたのは2008年から10年にかけてのことだった。女性職員は35年間も学園に勤め、東京・世田谷の宮城さんの自宅兼事務所に同居していた人物だ。

「最初は主犯の音楽家が女性職員を騙していた。“学園のために作ったCD原盤を失くしたから、再制作費を出じて”などと嘘を言い、宮城さんの口座からお金を引き出させていました」

 と語るのは、司法クラブの記者だ。

「やがて女性も騙されていることに気づいたのですが、逆に“金を引き出したことを宮城さんにバラすぞ”と脅され、ずるずると犯行を重ねてしまった。被害のうち起訴されたのは31OO万円分。男に二審で懲役4年が言い渡され、女性は一審で懲役2年が確定した」

 しかし実際の被害総額は3億円だったという。

「あれはね、私が買いたいものも買わずに貯めたお金です。もうこの10年、服なんて一着も購入していません。学園の子どもたちのために残してあげるお金だったんです。私が亡くなった後、彼らが生きていくためにお金が必要ですから」

 と、宮城さん。この数年は転んで腰の骨を折ったり、病気もするなど、辛いことばかりだったと肩を落とす。だが、一転、目を輝かせてこうも話すのだ。

「でも、神様は世界を上手に作ってくれているんだなと思います。近く、ビクターからCDを出すことになったんです。最初はそんな気持ちは全然なかったけど、100曲入りのCDと聞かされ、面白いとその気になりました。担当者が上手に誘惑してくれたんです」

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