東京五輪は“2022”に? コロナ延期に備えNHKが編成変更へ 中止の損失は7・8兆円

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観測気球

 延期論に関しては、元電通専務で大会組織委員会理事の高橋治之氏が米紙のインタビューで、

「1~2年延期するのが最も現実的な選択肢」

 と述べ、組織委の森喜朗会長がそれを全面的に否定する、というやり取りがあったが、

「高橋さんが森さんに無断であんな発言をするとは考えにくいので、観測気球と見た方が良い」(スポーツ紙記者)

 都庁OBで国士舘大学法学部客員教授の鈴木知幸氏はこう話す。

「高橋さんの本音は『2年延期が良い』でしょう。来年の8月にアメリカで開催される世界陸上は電通が放映権を握っている大会ですから、そことバッティングさせるわけにはいかない。再来年はカタールでサッカーワールドカップがありますが、時期も11~12月ですし、五輪に出場する選手とワールドカップに出場する選手は年齢層も被らない。それで『2年延期が良い』と考えているのでしょう」

 先の春日氏も言う。

「どうしても延期するのであれば、『2年延期』が一番すっきりまとまるのではないかと思います。2022年に開催にすれば中国の北京で行われる冬季五輪と同年開催となり、『アジアが一丸となる』というオリンピック理念の一端を体現することができます」

 WHOとしても、

「ウイルスの終息に来年までかかる国や地域が出てくる可能性があるので、延期するなら1年ではなく2年の方が良いと考えているようです」(政府関係者)

 しかし、1年であれ2年であれ、延期することになれば各競技の選手たちに与える影響は甚大である。

「20年夏に合わせてコンディションを整えてきたのに、年単位で延期となれば調子も狂います。気力面でも『また長期間頑張らないといけない』という負担がかかりますし、年齢などで体力的に持たない選手も出てくるでしょう」(先の春日氏)

 影響を受けるのは選手たちだけではなく、

「例えば、東京・晴海に作る選手村は大会後に増改築し、23棟のマンション、計約5600戸を売り出す予定になっています。すでに販売済みの物件もあり、開催が延期になって予定通りに引き渡しができなくなると、補償問題に発展する可能性もあります」

 と、先のスポーツ紙記者。

「また、五輪の競技会場の中には、すでに1年後の使用予約が入っているものがある。延期になった場合、会場が借りられない可能性もあるのです」

 スポーツ評論家の玉木正之氏の話。

「過去に五輪が中止になった5回は全て戦争が理由でした。疫病での中止となれば前代未聞です。また、4年ごとというタイミングではなく開催されたのは1906年のアテネでの1回だけ。どちらにせよ極めて異例の事態となります。五輪憲章や開催規模など、五輪の在り方自体を見直す時機が来ているのではないでしょうか」

 東京五輪だけではなく、五輪そのものが揺らいでいるのである。

週刊新潮 2020年3月26日号掲載

特集「『新型コロナ』との消耗戦 NHKが番組編成変更へ…『東京2020五輪』消滅で浮上する疑問」より

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