「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘

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闇を暴く鍵

 菅官房長官が言及したという「アフリカ人」と同一かどうかは定かではないが、五輪招致委員会が「アフリカ人親子」をターゲットにしたのは事実である。

 招致活動が行われていた当時、IOC委員で五輪開催地を決める投票権を有していたラミン・ディアク国際陸連会長と、その息子のパパマッサタ・ディアク。そのパパマッサタと関係の深いシンガポールの会社に招致委が「コンサル費用」などの名目で計2億3千万円を振り込んだことが判明しており、フランスの捜査当局は「賄賂」だと疑って捜査を開始。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は辞任に追い込まれた。

「ディアク親子はアフリカ票の取りまとめ役と見られ、金はそこからさらに十数カ国のIOC委員に流れたのではないか。とすると、その買収費用は招致委からの2億3千万円だけでは全く足らず、嘉納財団からの2億もそのために使われた可能性があります」

 と、スポーツ団体関係者。

「フランスの捜査当局は現在も東京五輪の買収疑惑を捜査中ですが、今年1月、面白い動きがあった。息子のパパマッサタが司法取引狙いで大量の資料を当局に提出したのです。そこに嘉納財団からの入金を示すような資料が含まれていると、点と点が繋がって線になる可能性もあります」

 一方、点と点が繋がっては困るのが嘉納財団側である。2月13日、財団側が小池知事に対して奇妙な依頼をしてきた背景にも、そうした思いが見え隠れする。

「嘉納財団の基本財産は300万円で、そのうち75万円を出捐(しゅつえん)、つまり出資しているのは東京都です」

 と、事情を知る関係者が語る。

「週刊新潮が里見会長から嘉納財団への寄付について記事にすると、慌てて財団側は都に対して、『出捐』から手を引くよう要求してきたのです。今後、都は『出捐者』として何らかの形で寄付金の使途を知り得る可能性がある。そのことを財団側は恐れているのでしょう」

 当然ながら、小池知事は財団側の要求を拒否。財団の闇を暴く鍵は彼女の手に握られているのだ。

 嘉納財団の代表理事を務める森会長と小池知事の因縁の発端は08年の自民党総裁選だとされる。「清和研」としてまとまって「麻生太郎擁立」でいきたかった森会長の意向を無視して彼女は出馬。「一生許さない」と激怒した森会長はその言葉通り、東京五輪開催が決まった後もあからさまな「小池外し」を繰り返した。

 五輪開催目前となった今、その小池知事の側に、森会長が最も嫌がる手札が転がり込むとは、因果は巡るという他ない。もっとも、無事に開催にこぎつけたいという点では「同じ方向」を向いている2人。“最後の戦い”の火花が散るのは、五輪が終わった後、ということになろう。

週刊新潮 2020年3月5日号掲載

特集「『五輪買収資金』疑惑で『森元総理vs.小池知事』の暗闘」より

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