新型コロナの脅威は総理官邸にも… 番記者が感染危機、官僚に亀裂

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 米国発の訴訟リスクを抱える日本政府だが、それ以前にすでに内部から蝕(むしば)まれていた。権力の中枢にウイルスの魔の手が忍び寄り、「亀裂」まで生じていたのだ。

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〈埼玉県に住むハイヤー運転手の60代男性で、今月7日以降に都内で二つの医療機関を受診。13日に肺炎と診断されて別の医療機関に救急搬送され、16日に陽性と判明した〉

 2月16日、共同通信はこう報じた。陽性患者が増え続けているのはもはや日常の光景となっている。このニュースもそのひとつであり、一見すると特別性は感じられない。だが、感染者が「ハイヤー運転手」だったことが国の中心である総理官邸をも揺さぶることになったのだった――。

「感染者が運転するハイヤーを、共同通信の記者たちが使っていたんです」

 と、全国紙の官邸担当記者が説明する。

「そのハイヤーに乗っていた共同通信の記者ら10人は自宅待機となりました。そして彼らの中には、警視庁担当の記者がいたのに加え、総理番の女性記者も含まれていたんです」

 総理番記者の仕事は総理大臣にくっついて回ることである。つまり先のニュースは、「運転手→記者→総理」という感染経路で、国のトップが新型肺炎に罹患する危険性が浮上したことを内包していたのだ。

「共同通信の総理番記者発で他社の記者にもウイルスが蔓延している可能性があり、それを自分にうつされることを恐れた外務省出身の総理秘書官は、自分のところに夜回り取材に来てはならないと『取材禁止令』を出しました。結果的に問題の総理番記者は、感染の疑いはないということで、しばらくして職場復帰したんですけどね……」(同)

 我が国のコントロールタワーである総理官邸が「感染官邸」となる最悪の事態は避けられたわけだが、新型コロナウイルスの脅威は国家中枢のすぐ傍にまで押し寄せているのである。

 しかも、そのウイルスは感染とは別の形で国家を「侵食」していて、大手メディアの政治部デスク曰く、

「当初、政府は中国からの入国制限を湖北省からの人に限定するなど、中国に配慮した措置を取っていた。こうした対策を主導したのは、“コネクティングルーム”でお馴染(なじ)みの厚労省の大坪寛子官房審議官とされています。この対中弱腰姿勢に、安倍総理の側近である北村滋国家安全保障局長が激怒している。新型コロナウイルスによって、国の存亡を担う官僚たちの関係がギスギスしています」

 ウイルスの真の恐ろしさは、肉体が病むだけでなく、その不気味さによって人の心をかき乱すことにあるのかもしれない。

週刊新潮 2020年3月5日号掲載

特集「『感染者百万人』という脅威」より

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